「中国はまるで暴力団ですね。事実上の“人質”だった教授を“解放”して恩を売るカードを切った。来春に予定されている習近平国家主席の“国賓訪日”を歓迎しない雰囲気が、日本社会に出てきたからでしょう」(中国ウオッチャー)
何しろ“法治”のない国のトップが、香港政庁に対して“法治”を守るために抗議活動を抑圧しろと“法治”遵守を言いつけるのだからアベコベだ。こうした矛盾に一部の日本国民が気付いたのだ。
去る11月11日、佐藤正久前外務副大臣は「香港問題」「邦人拘束問題」「尖閣問題」「日本食品の輸入規制問題」を挙げ、「4つのトゲを抜かないと国賓というわけにはいかない」と述べた。40人の自民党議員が参加する「日本の尊厳と国益を護る会」(代表幹事:青山繁晴参議院議員)も同じ理由で反対を表明した。
しかし、何と言っても最大の問題は、日米関係に亀裂が生じることだ。
「米中戦争の最中に、米国の同盟国日本が、米国の敵国に接近する行為は裏切りと言えます。ですから日本に対する態度は明らかに冷淡です。トランプ大統領も就任後封印していた『日米同盟不平等論』や『貿易摩擦問題』を再び持ち出し始めているのが何よりの証拠です。10月22日に行われた天皇陛下の『即位礼正殿の儀』には、世界各国から国王・王妃や大統領、首相などが来日しましたが、米国からは運輸長官のみの参加でした。日本政府は、こうした米国が発したシグナルに早く気付くべきです」(国際ジャーナリスト)
国賓となれば、天皇陛下の歓迎を受けることになる。ウイグル族100万人を拘束する国の独裁者と、天皇陛下が相まみえる映像が世界に配信されることになる。
「国際社会は『天皇に政治的決定権は一切ない』という知識を持ち合わせていません。ですから日本の天皇が、独裁者と歓談していると非難されることが容易に想像できます。もし習主席の国賓来日が実現すれば、次に中国が当然のように要求するのは天皇訪中です。江沢民元主席は1992年4月に訪日し、天皇皇后両陛下(現:上皇上皇后両陛下)を中国に招待、同年10月に天皇皇后両陛下は訪中されました。当時、世界から孤立していた中国は、この天皇訪中を利用し苦境から脱したのです」(同・ジャーナリスト)
その後の江沢民は手のひらを返し、1994年「愛国主義教育実施要綱」を制定して翌年から徹底した“反日教育”を行うようになった。これは現在もなお続いている。この轍を、安倍政権は再び踏もうとしている…。