「二塁手の菊池(涼介/広島)の出場がビミョ〜です。メジャーリーグ挑戦、最後の自己アピールの場として今大会に出場しているので、本人は出たいでしょうが。選手を預かる稲葉(篤紀)監督の立場からすれば、無理はさせられません」(スポーツ紙記者)
スタメン出場が見送られたとしても、内野陣は“菊池シフト”を変えない。
菊池の守備位置が他の日本人二塁手よりも後方なのは、有名な話。外野の芝生付近まで下がれば、前後左右に広く動ける。守備範囲は広くなるが、一塁までの送球距離も長くなる。送球のスピードに自信がなければできないテクニックである。
「侍ジャパンで二遊間コンビを組む坂本(勇人/巨人)が、菊池に合わせ、シーズン中よりも後方に下がって守っています」(球界関係者)
「守備は菊池を中心に」の方針で臨んだのだろう。今大会中、一塁走者が出ると、ショートの坂本がセカンド・菊池の方を“チラ見”する場面も見受けられる。シーズン中よりも後方に守るのも、菊池との併殺プレーの呼吸を合わせるためだ。
その菊池が欠場したメキシコ戦(13日)、外崎修汰(西武)がスタメン・セカンドで出場したが、こちらもペナントレース中よりも「やや後方」に守っていた印象を受けた。NPB関係者がこう続ける。
「打球が強いですからね。侍ジャパンのバッテリーは低めへの変化球を勝負球にする配球で臨んでいるので、内野手のエラーは致命的な失点にもなりかねません。用心もあって、後方に守っています」
菊池のように後方に守るシフトは、メジャーリーグではごく普通のこと。日本人内野手はメジャーリーガーのような肩の強さがないため、「比較的、前方に守る」態勢になった。
「菊池がスタメンで出なくても、後方で守るシフトで韓国戦も臨みます」(前出・同)
菊池・坂本の二遊間コンビは、アイコンタクトで守備位置や、二塁送球のタイミングを確認していた。外崎、山田哲人(ヤクルト)、本来はショートを守る源田壮亮(西武)がセカンドに入った場合、アイコンタクトの回数は増える。菊池が韓国戦に出ない場合、ペナントレースと同じ「やや前方」の守備体系で臨んだほうが、失敗のリスクは少なくなると思うのだが…。
「韓国打線の要注意バッターは3番の李政厚(イ・ジョンフ)ですよ。今大会、絶好調です。元中日の李鐘範(イ・ジョンボン)のご子息です」(前出・球界関係者)
韓国を指揮する金卿文(キム・ギョンムン)監督は、北京五輪で日本に黒星を付け、チームを金メダルに導いた名将だ。予選リーグの試合で、星野仙一監督(当時)が左腕・岩瀬仁紀(中日)を投入し、逃げ切りに入ると、左バッターを代打に出し、日本ベンチを「何かあるのでは?」と幻惑させた。同監督の名前を聞き、当時の悪夢を思い出したスタッフも少なくないという。試合主導権を渡さないためにも、失策は防ぎたいところ。坂本が菊池の代わりに内野守備陣を牽引できるかどうかが、ポイントとなりそうだ。(スポーツライター・美山和也)