「クソ…、オレが配偶者控除の欄に彼女の名前を書きたかったのに…」
諦めきれなかったDは「いざというときに頼りになるのはどんな男なのか」を教えるため、夜中にいそいそと彼女の家まで出かけ、駐車場に止まっていた彼女の軽自動車のブレーキの配管部分に当たるブレーキホース4本をすべて切断した。(こうすれば、出勤できなくなる。きっと彼女は職場に電話をかけてきて、車に詳しい自分を頼ってくるに違いない。フフフ…)
これがDの算段だった。
すると翌日、彼女が車を発進させようとしてエンジンをかけた途端、ブレーキがかからずに駐車場内のブロック塀に衝突。ケガをして会社へ行くどころではなくなり、警察の調べでブレーキホースが切断されていたことが分かった。
「いったい誰がこんなことを…」
事件を聞いてDも心配するフリを装っていたが、警察が近くの防犯カメラを調べたところ、深夜3時に工具箱を持って必死にブレーキホースを切っているDの姿が…。Dは器物損壊容疑で逮捕された。
「彼女が好きだった。車が壊れれば、車に詳しい自分を頼ってくれると思った」
アブナイ男である。これでは彼女どころか、職場にいる女性全員からソッポを向かれてしまうだろう。