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キャバ嬢がキレた瞬間(9)〜店長のセクハラ〜

 いつも通り営業が終わり、店の中で送りの車を待っていたら店長がわたしのところに来て言った。

 「さなちゃん、今日手違いで君の名前送りの名簿に載ってなくて、車乗れなくなっちゃったんだよ、ごめん」

 えぇぇぇ!! 嘘でしょ…。明日は学校なのに、カラオケボックスしか居場所ないじゃん…。

 途方にくれるわたしに店長は

 「せっかくだから飲みに行かない?」
 と誘われた。

 「当然おごりですよねー? 手違いはそっちのミスなんだから」

 むくれるわたしに、店長は人懐っこい笑顔で答える。

 「きまってんだろ、俺陽菜ちゃんと一度でいいから飲みにいきたかったんだぜ。金なんて払わすわけないさ」

 そういうことならと、わたしは店長と近くの某有名チェーン居酒屋で、しっかり飲み食いさせてもらい、大満足でお店を出た。焼酎のソーダ割り美味しかったな〜。

 しかし、さてこれからどうしたものか。カラオケボックスで時間つぶすか、ネカフェでも行くか、と考えてお財布を確認していたら、店長が口を開く。

 「そういうところもお金かかるから、お店で始発待ったら?」

 わたしは、お言葉に甘え、ありがたくお店にいさせてもらうことにした。

 客席にブーツを脱いで早速ごろんと横になった。いい感じに酔っぱらってて、寝ちゃいそう…。

 うとうとしかかったときに、なんだか自分の上に覆いかぶさる影が。

 え??

 急速に酔いが冷めて、我に返って目の前を確認すると、なんと店長がわたしに…。え、信じたくない。ていうか、店長帰ったんじゃないの??

 「ちょ…やっ、やめてください!!」
 「二人きりになるってことはこういうことだろ、今更何いってるの」

 やだやだやだ、好きでもない人となんて無理っ! ていうか、お店だよ?
 いや、場所の問題じゃなくて、最初からこれが目的で…?
 まさか車に乗れないなんていうのも店長にはめられたとか??

 「車乗れないって嘘だったんでしょ」
 わたしは必死で抵抗しながら、問い詰める。

 「もちろん。さなちゃんと一度飲みたかったっていっただろ」
 「こんなことするなんて一言も聞いてません!」

 わたしは、何をしたかあまり覚えてないのだけど、そのあとおでこが痛かったので、頭突きで店長をひるませたんだと思う。ひるんだ隙に、ブーツとバッグをひっつかんで階段を駆け下りて逃げた。

 そしてどうやって帰ってきたのかもよく覚えてないのだけど、大通りをずっと走り続け、途中でタクシーを拾い、携帯で嬢友達に電話した。

 「あいつ、ひどいんだよ…。明日からどうやって店に行こう…」

 わたしは押さえつけられていた手首が痛いのと、女を馬鹿にした店長に腹がたったことの両方で涙が止まらなかった。

文・二ノ宮さな…OL、キャバクラ嬢を経てライターに。広報誌からBL同人誌など幅広いジャンルを手がける。風水、タロット、ダウジングのプロフェッショナルでもある。ツイッターは@llsanachanll

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