そんな全国民が注目している甲子園であるが、今から25年前の1993年。とあるテレビ局の職員が試合中、球場にいたチアリーダーを盗撮する、という不祥事が発生。新聞沙汰になったことがある。
事件は、2回戦に入ったばかりの8月14日に発生。この日も球場には多くの取材陣およびテレビマスコミが訪れていたのだが、ひとり不審な動きをする某局の男がいた。
その男は腕章とビデオカメラを持っていたのだが、試合が行われている最中、なぜかカメラを選手ではなく、スタンドにいるチアガールばかりに向けていたのだ。男のカメラの向きに違和感を覚えた球場の係員が「何を撮っているんだ」と一度注意したのだが、無視しカメラを回し続けたため、球場の係員は大会本部を通じて甲子園署へ通報。警官がカメラを調べた際、テープには高校球児ではなく、彼らを応援しているチアガールたちの下半身ばかり写っており、兵庫県の迷惑防止条例で書類送検することになった。
なお、この男は当初、某テレビ局の職員を騙ったニセモノではないか、とされたが、身につけていた腕章は実際にその局が使用しているもので、信じられないことに本物の職員であったのだ。
彼はお盆で休暇をとっており、盗撮目的で甲子園にやってきていた。
腕章は同僚から借りたもので、カメラは自前の8ミリカメラを持参したものだった。現職職員の盗撮行為に甲子園の関係者はカンカンに怒り、その局に今後一切の「出入り禁止」を申し立てようとしたが、彼の直属の部長が甲子園関係者および学校関係者へ謝罪したことで、出入り禁止は免れることとなり、現在に至るまで放送権は剥奪されていない。
しかし、本物の職員が立場を利用し盗撮行為とは……古い事件とは言え世も末である。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)