今回、貴乃花当選を側面から演出したのが、一門から票が流れた立浪一門で、混戦の震源地にもなった。というのも、前回、一門の長老・大島親方(元大関旭国)が落選。凄惨な裏切り者捜しまで繰り広げた後遺症から「今度は手堅くいこう」と、いち早く若手にも人望がある新人の春日山親方(元幕内春日富士)の擁立を決めた。当選ラインは10票。立浪一門には18票の基礎票があり、候補者一人なら悠々と当選だ。
「その代わり、8票が死ぬことになる。これに対する一門内からの批判を背に、まず現職の友綱親方(元関脇魁輝)、さらに伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)も手を挙げ、3人が立候補することになった」(担当記者)
この内輪揉めで追い風が吹いたのが、基礎票が13票しかない高砂一門から新人の八角親方(元横綱北勝海)に次ぐ2人目の候補として立った九重親方(元横綱千代の富士)だ。
「今回も第1候補の座は八角親方に奪われ、一門内の予備選で高砂親方(元大関朝潮)に競り勝ち、やっと第2候補に滑り込みました。この第2候補は、連携する時津風一門の協力を仰がないと当選ラインには到達しませんが、問題はこの時津風一門。湊親方(元幕内湊富士)、錣山親方(元関脇寺尾)、時津風親方(元幕内時津海)ら3親方が貴乃花親方に投票する意向を示していました。このため、当選ラインに届くのは非常に難しかったのですが、結局は友綱親方が落選、伊勢ケ浜親方は投票直前に辞退を申し入れ、九重親方が当選となったのです」(協会関係者)
一方、貴乃花親方は、安泰モード。この2年間、地道に勢力拡大を図った結果、人材難から現職の鏡山親方(元関脇多賀竜)一人しか候補を立てることができず、票がダブついていた時津風一門から3人以上の賛同者を得ることに成功。いち早く当選圏内に到達した。
また、新理事の互選で決まる理事長には、北の湖親方が返り咲いた。
「大相撲界はこれから公益財団法人の認可に向け、協会の一括管理が決まった年寄株の買い上げ値段の設定など、直面する重大問題が山積している。前回、指導力でもう一つ物足りなかった北の湖親方がどう牽引していくか。いずれにしても大変ですよ」(協会関係者)