A:虫歯は、口腔内の細菌が糖質からつくった酸によって歯を溶かすことでできます。また、歯の表面が溶け出すことを脱灰(だっかい)といいます。
酸を含む食品を摂取した場合も同じことが起こります。飲食物に含まれる酸によって歯の表面を覆うエナメル質が溶けるわけです。
そうなると、表面の下にある象牙質が透けて黄色く見えたり、歯の先端がひび割れし、ひどい場合は、歯の内側がえぐられたように溶けて薄くなります。
●口の中が酸性に傾く
酸の強いものを摂取すると口の中は酸性になります。しかし普通は、唾液の働きで中性に戻ります。唾液のリン酸カルシウムが歯の表面のエナメル質を修復します。これが再石灰化です。
脱灰と再石灰化をくり返すことで、歯は守られているのです。さらにフッ素には、リン酸カルシウムを歯に集め再石灰化を促す働きがあり虫歯予防に有効です。そのため、歯磨き剤によく使われます。
強い酸性を示す飲食物としては、酢のほかに柑橘類やジュース、ワイン、スポーツ飲料などたくさんあります。利用の仕方が悪いと、酸蝕歯を引き起こす原因となります。
●酢やワインを飲んだ後は歯磨きを
ご質問の方は、天然酢を飲む習慣があるそうですが、それは常に酸蝕歯のリスクにさらされています。特に就寝前に飲んで、うがいも歯磨きもしないで寝れば、酸蝕歯のリスク大です。
酢を摂取したら歯磨きをすればよいのですが、酸にさらされた直後のエナメル質は一時的に軟らかくなります。ですから、摂取してから20〜30分後に行いましょう。
歯磨き剤としてはフッ素入りがお勧めです。ゴシゴシと強く磨かないようにしてください。よくうがいをするだけでも相当効果があります。
また、ご質問の方はワインも毎日飲むそうですね。そのワインも酸性の飲み物です。だから、長時間にわたって飲むと、歯が酸にさらされる時間が長くなり、酸蝕歯になるリスクが高まります。
対策としては、何かを食べながら飲むようにすることです。そうすれば口の中で酸が薄められるので、酸蝕歯になるリスクを減らすことができます。
渡辺秀司氏(とつかグリーン歯科医院院長、漢方歯科医学研究所所長)
独自の歯周病治療で名高い神奈川歯科大学卒。同大学研修医を経て、とつかグリーン歯科医院を開設。歯学博士。天然素材を配合したうがい薬や歯磨き剤を開発。漢方歯科医学研究所所長。