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怪談作家・呪淋陀(じゅりんだ)の「怪談:他人の顔」

 和美さんは写真嫌いだ。
 別に、写真を撮られると魂を抜き取られるという迷信を信じているとか、ルックスに自信がないからという理由ではない。

 ある時、和美さんは海辺の公園へ遊びに行った。
 天候もよく海の眺めも綺麗だった。感動した彼女は携帯のカメラで美しい風景を撮影した。早速、友人に撮れたばかりの画像をメールで送った。

 やがて、友人から返事が届いた。
 〈喜んでくれたかな〉
 和美さんは心待ちにしていたメールをチェックすると、そこには意外な事が書かれてあった。

 「気持ち悪いもの送って来ないでよ〜!」

 それは友人からの怒りの文面だった。
 驚いた和美さんは、慌てて先ほど友人宛に送った画像を確認した。
 彼女はぞっとした。
 綺麗な青い海。それを背景に、歪んだ男の顔がうっすらと画面いっぱいに写っていた。
 〈誰だこいつは!?〉

 以来、和美さんは自分の顔写真を撮ると、まるで別人のような顔で写る事が多くなったのだという。その為、写真に撮られるのを自然と避けるようになってしまった。
 「写るのは所詮、他人の顔だから…」
 あの時、海で撮れた男の顔に似ているという。

(怪談作家 呪淋陀(じゅりんだ)山口敏太郎事務所)

参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou

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