生き残ったHさんは事情を尋ねられ、「夜の海を見ようとドライブしていたところ、誤って海に落ちた」などと説明したという。
「現場となった埠頭は夜景の名所で、車止めもありませんでしたが、ブレーキ痕もなかったため、警察が詳しく調べたにもかかわらず、事故の可能性を否定できませんでした。Kさんは司法解剖されたものの、薬物などは検出されず、死因は水死と断定。車はKさんが運転していたそうです」(地元記者)
★億単位の資産を持つ妻と駆け出しの若い夫
告別式で、「妻が生前、お世話になりました。この1年間、休みにゴルフに行ったり、映画鑑賞に行ったり、楽しかった。今後とも変わらぬお付き合いのほど、よろしくお願い致します」と挨拶したHさん。
関係者によると、2人は大阪の異業種交流会で知り合い、わずかな交際期間を経て、事件の1年2カ月前に結婚。だが、億単位の資産を持つKさんと駆け出しの貿易商であるHさんとの結婚に、周囲は大反対したという。
「それで2人きりでハワイに結婚式を挙げに行った。そこで撮ったウェディングドレス姿のツーショット写真を経営する美容院の店内に飾り、来る客全員に嬉しそうに見せていた」(常連客の一人)
Kさんは男勝りな性格で、仕事に厳しかったことなどから、メキメキとビジネス界で頭角を現していったものの、浮いた話もなく、「独身の方が絶対いい」がモットーだったという。
それが、Hさんに会ったことで一変した。「恋人ができて楽しい」とノロけるようになり、挙式後は未婚の友人たちに手紙を出しては、「あなたも結婚しなさいよ」と逆に勧めるようになったという。
問題は、遺産の行方だ。Kさんには弟や甥や姪がいたものの、法律上の相続順位により、全て配偶者のHさんが引き継ぐことになったという。
「これは『絶対におかしい』というのが、知人一同の共通した意見です。Kさんはペーパードライバーで、いつも自転車に乗って買い物に出かけていたんです。それが、なぜ夜の街をドライブするのか。警察には情報提供しましたが、結局、事件性を立証できなかったのです」(Kさんの知人)
筆者が2人の“愛の巣”を訪ねたところ、「留守番だ」という女性がインターホン越しに、こう答えた。
「あれは事故です。本人たちは幸せだったらしいですから、もう、そっとしておいてあげてください」