A:内臓の手術をした後には、内臓の冷えが起こることがあります。血液循環が悪くなるからです。胃腸などの内臓が冷えると、内臓の働きが低下します。そのために、下痢になったり便秘になったりするのです。
腸は蠕動運動をして、便を下へ下へと移動させます。蠕動運動は、ちょうど尺取り虫の動きのようなものです。人が、親指と人差し指で尺をとるような進み方です。
●手術による内臓の冷えが原因
腸はそれと同じような動きをしますが、その動きはけっこう速いので、普通は蠕動運動を感じることはありません。ところが、冷えがあると蠕動運動がゆっくりになります。すると、動いているのが感じられるようになります。ですから、ご質問の方のように、モコモコとしている感じがします。それが腸に冷えがある場合の特徴です。
冷えているのですから、温めることが対策の基本です。外から温める方法としては、使い捨てカイロをヘソのあたりに貼るのがもっとも効果的です。必ず、下着の上から貼ってください。
●カイロで温め、漢方薬の服用を
使い捨てカイロにはいくつかサイズがありますが、大きさはどれでもかまいません。使いやすいものを使用しましょう。腸が温まれば、蠕動運動は正常になり、便秘や下痢が解消します。
漢方薬には内臓の冷えに効くものがあります。その代表的なものが「大建中湯」です。
「建」はすこやか、「中」はお腹の意味で、腸の働きを元気にします。この漢方薬には、温めて腸の働きをよくする生薬の山椒などが配合されています。
西洋医学には、このような発想はないし、こういう薬もありません。しかも、西洋医学の便秘薬(下剤)は、お腹を冷やす作用があるので、逆効果となるし、かえってよくないのです。もとより、内臓の冷えによる便秘に西洋医学の便秘薬は効きません。
また、普段の注意としては、飲み物は冷たいものを避け、温かいものを飲みましょう。内臓の冷えは慢性的になると、いろいろな病気を引き起こすことになりかねません。以上のような対策を講じて、早めの改善を!
三浦於菟氏(東邦大学医学部医療センター大森病院東洋医学科教授)
東邦大学医学部卒。国立東静病院内科勤務を経て、中国・南京中医学院、台湾・中国医薬学院に留学。日本医科大学附属病院東洋医学科助教授を経て現職。著書『東洋医学を知っていますか』など多数。