このキャッチフレーズは、健康オタクでなくても誰もが承知していることだ。
ブドウの皮に含まれるポリフェノールの一種、レスベラトロールには抗酸化作用が強く、高脂肪食を摂った人の健康状態を良くしてくれるというのが常識だった。事実、フランス人には心臓疾患の発症率が低い。喫煙率が高く、高カロリーな食事を好む彼らに心臓病が少ないのは、赤ワインをたくさん飲んでいるからだというのである。
「ところが、これに異説を唱える研究者が出現した。米国のジョンズ・ホプキンス大医学部のリチャード・センバ博士率いる研究チームが、9年間にわたりイタリアのワイン生産地で65歳以上の男女783人の健康状態を追跡。ワイン通にポリフェノールの効き目があったかどうか確認したが、レスベラトロールを摂取しても健康促進に効果がないと結論づけたのです」(健康ライター)
それどころか、心臓疾患のなかった639人のうち、174人が心臓疾患を発症。ガンを患っていなかった734人のうち、34人がガンにかかってしまったという。
いったいどういうことなのか。山梨医科大学名誉教授の田村康二氏が言う。
「赤ワインのおかげで心臓疾患やガンが少ないという“フレンチパラドックス”は、フランスでも崩壊しつつある。以前、フランスの心臓病学者と会食した際、愚かな母親は赤ん坊が泣くとミルクにワインを入れて寝かせておけばいいというが、それは下層階級の教育のない人の言うことだと語っていました。イタリアでも、すでに10人中8人はワインを飲まない状態なのです」
フレンチパラドックスを信じているのは、欧州のことに疎い日本人だけだという。
もちろんたしなむ程度に楽しめばいいが、他の酒と同様、赤ワインについても飲み過ぎは体によくないということだ。