民主党の代表が小沢一郎から鳩山由紀夫に交代した直後がいい例だ。それまでは、自民党の麻生太郎が人気(支持率)では民主党の小沢をリードしていたのに、民主党が自民党を再逆転した。
民主党執行部は旧自民党、旧二院クラブ、旧社会党、旧民社党とまさに寄り合い所帯。傍(はた)から見ると野党が大同団結したように受け取れるが、国民の側からすれば実に「おもしろい党」との印象がある。
だから、政権を任せてもいいのではないかと考えたのだろう。あの厳(いか)めしい小沢よりも、当たりがソフトな鳩山の方が国民に受けているふしもあり、麻生自民を逆転してしまったのだろう。
「この時期は国民生活に最も重要な案件を国会で議論しなければいけない。こんな折に解散・総選挙をするべきではない」と自民党の幹事長・細田博之は言う。
それまで、どちらかといえば解散・総選挙を煽(あお)るようなコメントをしていたことから考えると、民主党の代表選以来、自民党VS民主党、麻生VS鳩山は攻守ところを変えてしまったと認めたとも取れる。
「自民党は、政策といえばバラまき状態の体質は少しも変わっていない。会期末でもいいから、やはり解散させて国民に信を問え、と訴えたい」
鳩山は口を開けば念仏のように、こう唱えている。
対照的に自民党の河村建夫官房長官が、「麻生内閣をしっかり支えていくためにも、今度の総選挙は負けるわけにはいかない」と言うのは、その立場から当然の発言だ。しかし、政府与党も野党も選挙モードに突入してはいるが、目下のところ、どちらからもまだ緊迫感は伝わってこない。
民主党は小沢を代表代行にして選挙に臨む。小沢という人物、自民党の旧田中派時代から選挙上手で通っていたから、民主党はその手腕に全幅の信頼を置いている。なぜなら、現在のねじれ国会は、その小沢が作り出したものだからだ。
「参院みたいな現象は絶対作ってはいけない。今からでも、(自民党の)人気回復策を考えないといけない」
細田幹事長は目くじらを立てるようにして党内を鼓舞するのは、民主党の選挙担当に小沢が就くことがはっきりしたからである。
その一方で、選挙のための股肱の臣(ここうのおみ=自分の手足のように頼りにできる者)を、1日も早く選び出そうとしている。遅くとも8月末までに総選挙は行われるはず。残された準備期間は、そう長くはないからだ。(文中敬称略)