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幕下・佐久間山が序ノ口から歴代単独1位のデビュー27連勝で史上最速十両へ王手も、元学生横綱なのに特別扱いされないワケ

 08年の学生横綱(「全日本学生相撲選手権大会」制覇)で、東幕下15枚目の日大出身・佐久間山(23=北の湖)が、大相撲初場所(東京・両国国技館)11日目(1月18日)で安芸乃川を押し出し、今場所6勝目を挙げ、序ノ口でのデビュー以来27連勝を飾った。これで、佐久間山は26連勝で並んでいた元小結・板井を抜き、歴代単独1位となった。今場所、あと1番残しており、全勝優勝を果たせば、来場所での十両昇進が有力となる。実現すれば、序ノ口デビュー組としては、板井らの所要6場所を抜いて、所要5場所での史上最速昇進記録となる。

 ここで、疑問に思う読者諸兄も多いと思う。元学生横綱でありながら、佐久間山はなぜ特別扱いを受けていないかだ。好対照なのが、彼と同期生で10年に「全日本学生相撲選手権大会」「国民体育大会相撲競技(成年男子A)」を制した日体大出身の千代大龍(23=九重)だ。千代大龍は特別扱いを受け、昨年5月の技量審査場所にて、幕下15枚目格付出でデビュー。同場所では2連敗の後、故障のため途中休場して、番付を下げたが、翌場所から3場所連続で勝ち越して、今場所、新十両となった。現在、西十両13枚目で10勝1敗のトップタイで、優勝のチャンスも十分だ。

 同じ学生横綱なのに、なぜ両力士の扱いが違うのか、それは日本相撲協会の規定にある。アマチュアで実績を残した者は、幕下15枚目格か10枚目格付出でデビューすることが可能。15枚目格は「全日本相撲選手権大会」(アマチュア横綱)、「全国学生相撲選手権大会」「全日本実業団相撲選手権大会」(実業団横綱)、「国民体育大会相撲競技(成年男子A)」(国体横綱)のいずれかに優勝した者。10枚目格はアマチュア横綱に加えて、上記のその他の3大会の1大会以上で優勝した者が有資格者。ただし、これには注釈があり、義務教育を終了した(中学卒業見込みを含む)25歳未満の男子で、その期限はいずれも優勝の日から1年間であるというもの。つまり、千代大龍は4年次の10年に2大会を制しているため、1年以内で有資格者。逆に佐久間山は2年次に優勝しているため、期限が失効しているわけだ。早い話、佐久間山が学生横綱になってから、1年以内に大学を中退して、角界入りしていれば、幕下15枚目格付出から取れたことになる。ただ、佐久間山はあくまでも卒業を優先したため、特別扱いにはならず、前相撲からのスタートとなったのだ。

 幕下付出のちゃんとした規定ができたのは66年5月だが、実はそのルールはコロコロ変わっている。当時は幕下最下位格(現在は60枚目)に付け出され、これは00年9月まで続いた。当初は大学相撲の体重別で上位入賞の経験があれば、ほぼ無条件で幕下最下位格に付け出されたが、93年3月から全日本選手権ベスト16以上、または学生選手権、実業団選手権、国体成年Aのいずれかに優勝、または3位以内が2回に基準が厳格化された。年齢規定も23歳未満とされたが、後に25歳未満に緩和された。

 00年9月の新ルール適用後、佐久間山と同様に前相撲から取ったのが、日体大出身の嘉風(29=尾車)。彼は3年次にアマチュア横綱となったが、卒業を優先したため、04年1月場所にて前相撲でデビュー。所要9場所で新十両、12場所で新入幕を果たしたが、幕内では伸び悩み、最高位は前頭筆頭。今場所は東前頭6枚目だ。

 かくして、協会が定めたルールによって、学生時代のライバル・千代大龍に大きな差を付けられてデビューした佐久間山だが、スピード出世でいち早くライバルに追い付きたいところだ。
(落合一郎)

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