8回表、中日の攻撃中。先頭打者をレフトフライに仕留めると、原辰徳監督がベンチを出た。球審に投手交代を告げると、球場から「えっ~!?」の悲鳴が聞こえた。サンチェスは1本のヒットも許していない。ノーヒットノーランと勘違いしたのかもしれない。
「米国と日本では、ノーヒットノーランの定義が異なります」(野球アナリスト)
日本ではノーヒットノーランの「ラン」は得点を意味する。つまり、サンチェスは完投・完封ができなかっただけ。それに対し、米国では相手チームに得点を許しても、ノーヒットノーランは成立する。敗戦投手になっても、だ。
実際、取材陣の中にも“日本式”を間違って記憶していた者もいた。筆者も日米の記録について勉強し直した側だが、今季のサンチェスを高く評価する声も多い。来日2年目、その躍進も「日本式」にあった。
「ようやく、日本の公式球やマウンドに慣れたようです。韓国球界にいたころから親日家を自称していましたが、日本のボールをしっかりコントロールできるようになりました」(プロ野球解説者)
過去、日本の公式球に戸惑う外国人投手は何人もいた。革の品質が高く、かつ丁寧に製造されているため、海外の公式球とは比べ物にならいほどクオリティーが高い。また、グラウンド整備もきめ細やかに行われており、外国人投手はマウンドに上がると、「柔らかい」と感じるそうだ。
「どちらがやりやすいかと聞かれれば、日本です。ただ、ピッチャーはボールが異なると、変化球の曲がり加減も変わるので戸惑ってしまいます。個人差はありますが、外国人投手は短期間で修正してきました」(前出・同)
サンチェスは「時間が掛かるタイプ」なのかもしれない。韓国球界に在籍していた時もそうだった。1年目はパッとしなかったが、2年目に17勝を挙げている。
「サンチェスには100球前後で交代させる旨を伝えていたようです。でも、『ノーヒット』を続ける投手の後に投げるので、ブルペンに待機していた投手は緊張していましたが」(球界関係者)
特に、2番手でマウンドに上がった中川皓太は緊張していたという。9回はデラロサが引き継いだが、待機していた他のリリーフ投手はゲームセットがコールされるまでブルペンを引き上げなかったそうだ。
通常の試合以上に緊張感のある継投試合となったようだ。
>>負け越しなのに巨人を「やっぱり力を感じる」と評価? 井端氏が古巣を擁護も「さすがに無理がある」ファンからは呆れ声<<
「エース菅野の調子がイマイチなので、サンチェス中心のローテーションに組み直されると思われます」(前出・プロ野球解説者)
試合前、来日の遅れていたテームズ、スモークの両スラッガーがチームに合流し、フリー打撃で快音を響かせていた。4月20日の阪神戦からの試合出場も囁かれていた。
ちょっと急ぎすぎている感もしないではないが、今、チャージを掛けなければ阪神が独走してしまう。巨人浮上のカギは“外国人選手”ということになりそうだ。(スポーツライター・飯山満)