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蝶野正洋の黒の履歴書 ★新型コロナ禍のスポーツ業界

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提供:週刊実話

 緊急事態宣言が5月31日まで延長されることになった。最初は、期限とされた5月6日までなんとかしのごうという気持ちが強くて、お互いに「ウチもヤバいよ」なんて言い合うくらいの余裕はあったけど、延長が決まったらそんな声すら聞かなくなるくらいシビアな状況になってしまった。

 プロレス業界は、興行を打たないとカネがまわらないのは明確だから、これは本当にピンチだと思う。2月後半から試合がなくなって、3月、4月、5月もまるまる興行が打てないということは、四半期ぶんの売上が立たないってことだから、会社も選手も危なくなってくるよね。

 業界最大手の新日本プロレスだって、選手は年間契約で社員じゃない。雇用という意味では守られないから、これからどんどん切られていくんじゃないかなって思うよ。実際、アメリカのWWEは会社を残すために、一部の選手やコーチの契約を解除した。「景気が戻ってきたらまた集まってもらうから、それまでなんとか個人でしのいでくれ」っていう前向きな人員整理なんだけど、新日本プロレスもそうなるかもしれない。

 会社側はトップクラスの選手ほど契約で縛って、かなりの金額を払っている。ただ、興行としての収益がまったく立たなくなってくると態度を変えるしかない。要は、カネがかかる所から切っていくというパターンもあるからね。

 プロ野球も、いまはまだスポンサーが付いてるからなんとかなるけど、運営している親会社が倒れそうになったら球団自体を手放すしかなくなってくる。

 日本のプロ野球に加盟するには、30億円の供託金が必要で、経済的にある程度の余裕のある会社じゃないとダメみたいだから、少しくらいの損失ならなんとかなると思うけど、今後はそれも危なくなってくるかもしれない。例えば、ソフトバンクもいま大赤字で、株主から「配当もないのに球団をキープするのか」みたいな文句が出てくる可能性だってある。

 野球はまだしも、サッカー、ゴルフ、バスケ、テニスといった、ほとんどのプロスポーツは試合の興行だけじゃ黒字になってないから、運営会社やスポンサーが手を引くと継続できなくなる。特に広告効果の薄いマイナースポーツや、人気のないチームは消滅したり、合併するみたいな話がこれから出てくるだろうね。

 しかもこのご時世、新たにスポンサーになってくれる企業がなかなか出てこないかもしれない。プロスポーツというのは、常に開催できるものではないし、リスクがあるというのが分かってしまったからね。

 スポーツは、もともと個人の健康維持だったり、体力を付けるためにする訓練みたいなものだった。それが発展して、娯楽になって、やるのも見るのも楽しむようになった。だから、ビール飲みながら試合を見るなんていうのは平和な時の話で、社会情勢が変わってしまうと今までのようにはいかなくなる。

 無観客でやればいいとか、そういう小手先のことじゃなくて、もっと抜本的な対策をしないとプロスポーツの市場は小さくなってしまう。いまをしのぐことも大事だけど、コロナ収束後にどうするのか、という具体的なプランを考えておかないとダメだよね。

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蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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