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〈企業・経済深層レポート〉 オーストラリア産が安くて美味!“国産離れ”に嘆く日本のコメ業界

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提供:週刊実話

 日本人の主食であるコメに異変が起きている。外国産米が外食産業や一般消費者に急激に浸透しつつあるのだ。

 農林水産省によると、2019年には前年度を3割も上回る8万トンも輸入されている。主食用外国産米は、日本のコメ農家を守るため、年間輸入枠は10万6000トンと決められている(枠超えは輸入業者に高い関税が課せられる)が、この勢いだと上限に到達する日もそう遠くないだろう。

 米穀卸業界関係者は、外国産米が浸透しつつある背景をこう明かす。

「外国産米増加の要因は、国産米の価格が年々上昇しているためです。農林水産省によると’18年まで4年連続で米卸売価格が上昇していて、’15年と比較すると約3割も上昇している。この高いコメを敬遠し、消費者が“国産離れ”をしている。外国産米の方が、1〜4割も安いですからね」

 外国産米が日本で伸びている理由は「価格の高騰」以外にもある。コメ卸業界関係者が指摘する。

「味ですよ。いくら価格が安いといっても毎日食べる主食だから、おいしくなければ外国産米にはそう簡単に乗り換えません。ひと昔前は『国産米は旨い、外国産米はまずい』と誰もが思っていたし、実際、日本人には違和感のある味でした。ところが、最近の外国産米は生産者の努力で改良され、日本人に好まれる味になっているのです」(同)

 その中でも、急速に輸入量を伸ばしているのが“オーストラリア産米”だ。農業試験場関係者が言う。

「オーストラリア産米は、タイなど東南アジア各地で栽培される長粒種と異なり短粒種が主力で、日本人が好むコシヒカリ似の円形デス」

 こうした日本人が好むオーストラリア産米ができたのは、明治時代に愛媛県松山市の篤農家・高須賀穣がオーストラリアに、コシヒカリの種を持ち込み、稲作を始めたのが発端だ。

「そこから改良され、今日のおいしいオーストラリア産米になった。そのため、国産米と言われても何の違和感もなくおいしくいただけるのです」(同)

 実際、日本の外食産業では、オーストラリア産のコメを使用する企業が増えている。

「ロイヤルホールディングス傘下で天丼チェーン『てんや』のご飯は、オーストラリア産を半分混ぜて消費者に提供する。定食屋『大戸屋』のヘルシーごはん『五穀ご飯』もオーストラリア産米です。都内中心に約70店舗を展開するそばチェーン『小諸そば』の天丼などのご飯にも、オーストラリア産米を使用しています」(同)

 外食産業だけでなく、外国産米を使用する一般家庭も増えているという。

 外国産米といえば、“平成の米騒動”と呼ばれる1993年のように、天候不順で国産米が不作に陥った際に、一時的に足りない分を補うために購入するというのがほとんどだった。

「それだけ消費者の間で国産米信仰が根強かったのですが、外食産業が外国産米を使うようになってからは、消費者の間で外国産米への抵抗感が徐々に薄れてきた。料理によっては外国産米のほうが合うということが浸透してきたため、料理好きの主婦はわざわざ外国産米を買う人もいるほどです」(フードアナリスト)

 日本へ輸入される外国産米では、オーストラリア産が注目される中、アメリカ産も負けてはいない。農業試験場関係者が言う。

「アメリカ産の主力米は、カリフォルニア産の『カルローズ』という米品種です。日本のコシヒカリなどの短粒種とタイ米などの長粒種の中間の中粒種で、オーストラリア産とは異なり粘り気が少ない。チャーハン、リゾット、ピラフ、ドリアなどの料理には最適です。九州地方の大手総菜店では、アメリカ産のコメを今より2割増やしていく方針です」(同)

 一方、国産米を使用する企業は減少することが懸念される。

「総務省の発表によれば、’95年に約256万人だった日本国内の農業従事者は、’18年には約145万人で約43%にまで減少している。農業従事者の平均年齢は’17年には66歳と高齢化に拍車がかかっている。そんな中、コメ農家は少しでも効率的にお金を稼ごうと、高品質のブランド米生産に行政と組んで力を注いでいます」(同)

 ’09年には北海道の「ゆめぴりか」、’17年には新潟の「新之助」といったブランド米が一般に販売されている。
「一般的な価格帯の国産米の供給が減り、価格も上がる悪循環に陥っています。そのため外食産業が求めてやまない『手頃な価格の国産米』はますます減り続け、業界では外国産米に頼る傾向が強まる。そのため外国産米の需要は、ますます増えるでしょう」(同)

 今のままでは、日本人の“国産米離れ”を止めることはできなさそうだ。

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