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神戸山口組 井上組長“側近”逮捕の衝撃

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提供:週刊実話

 六代目山口組(司忍組長)と神戸山口組(井上邦雄組長)が膠着状態にある中で、警察当局が動いた。

 六代目山口組・髙山清司若頭の三重県桑名市にある自宅へ銃弾が撃ち込まれた事件で、三重県警は銃刀法違反容疑(加重所持で起訴)で現行犯逮捕した谷口勇二元組員を、銃刀法違反(発射)と建造物損壊の疑いで2月25日に再逮捕した。

 谷口元組員には、渡辺芳則組長の五代目山口組直系だった中野会(解散)に所属した経歴があった。中野会は山健組から直系昇格した組織だったため、一部関係者の間では、髙山若頭邸への銃撃事件と神戸山口組との関係が囁かれ、個人的な恨みによる犯行を疑問視する声も上がっていた。

 こうした疑惑が無関係ではないのか、谷口元組員への取り調べを進める一方で、警察当局は別の手段で神戸山口組への攻勢を強めたのである。

 2月28日、大阪府警西成署が神戸山口組の中核組織・五代目山健組(中田浩司組長=兵庫神戸)の若頭補佐である藤岡宏文・誓仁会会長を、恐喝容疑で逮捕した。しかも、西成署は1月27日に傷害と恐喝未遂の疑いで逮捕(起訴)した九代目酒梅組(大阪)の吉村光男総裁も、同案件で再逮捕したのである。

「昨年4月から5月、2人は共謀して大阪の飲食店で50代男性に借金返済を迫り、1500万円を脅し取ったとされています。吉村総裁が起訴された傷害などの事件も、被害者は同じ男性で、『1億円返せ』などと脅して殴ったということです」(全国紙社会部記者)

 同一の被害者を巡って吉村総裁への逮捕を繰り返しており、警戒を強めたといえた。さらに、山健組・藤岡若頭補佐にも狙いを定めた背景には、何らかの思惑すら感じさせたのだ。

「なんでも被害に遭ったいう男性は、もともと吉村総裁と知り合いで2億円を借りとったんやが、会社が倒産して返済が滞ったようや。吉村総裁にしてみれば、額が額やから、当然、行動に移すわな。

 カタギを脅して無理に金を出させたいうんが大阪府警の見方やろが、貸した金やしな…。藤岡若頭補佐に至っては、吉村総裁を介して被害男性と知り合いだったいう程度のことらしいで。井上組長に近しい2人の名前が出たもんやから、あえて府警は事件化したんやないか」(在阪記者)

 吉村総裁率いる酒梅組は、六代目山口組と親戚関係にあったが、平成27年に山口組が分裂した直後、神戸山口組への支持を表明。時候の挨拶をはじめ、頻繁に交流を続けていた。吉村総裁が現在の役職に就いて以降は、さらに神戸山口組との結束を固め、井上組長と行動を共にする姿が常に見られたのだ。

 山健組・藤岡若頭補佐にしても、長きにわたって井上組長の“側近”を務めており、山健組が五代目体制になって若中から「幹部」、現在の若頭補佐に昇格して以降も、その関係は継続。いかに、井上組長にとって重要な人物かがうかがえた。

 大阪府警が、井上組長と最も親密な関係にある2人を逮捕した狙いは何か。ある関西の組織関係者は、逮捕劇の背景をこう見る。

「国を挙げた東京五輪を間近に控え、抗争抑止の意味で逮捕に乗り出したんやろ。六代目山口組・三代目弘道会(竹内照明会長=愛知)の神戸拠点で起きた組員銃撃事件の実行犯として、山健組の中田組長が逮捕、起訴され、現場不在が続く中で、井上組長と山健組最高幹部たちが集まって結束を固めたんや。

 暗に井上組長の影響力を示した会合でもあり、警察は動向を危惧したんやないか。井上組長本人を逮捕するのは難しいから、周辺の重要人物たちを一時不在にすることで、間接的にダメージを与えようとした可能性はあるで」

 確かに、神戸山口組直参で組長秘書を務める藤田恭道若頭補佐(二代目英組組長=大阪西淀川)も勾留中で、常に行動を共にしていた吉村総裁や藤岡若頭補佐まで不在となれば、影響が出かねない。

「そうは言っても、2月4日に山健組は與則和若頭、物部浩久本部長、若頭補佐9人いう新執行部になった。昨年4月の與若頭刺傷事件から、弘道会の神戸拠点での銃撃、山健組系組員射殺と“報復の連鎖”が起きとって、次は山健組の報復が起きるとみられる中での刷新人事やった。もう水面下では動き始めとるやもしれんから、府警の思惑通りにはいかんやろ」(同)

 特定抗争指定の効力が発揮されて以降、神戸山口組はもちろん、警戒区域に本拠を置く直系組織は、ひそかに区域外で会合を開いているという。複数人が集まる定例会ですら、現在は日程や開催場所が不透明になっているため、それ以上の動きを追うのは当局といえど困難なはずだ。

★井上組長と関東組織が接触

 一方、六代目山口組にも目立った動きは見られていない。2月16日に二代目大石組(井上茂樹組長=岡山)本部で、六代目共政会・荒瀬進会長(広島)と六代目山口組・安東美樹若頭補佐(二代目竹中組組長=兵庫姫路)が兄弟分となる縁組盃儀式が執り行われ、髙山若頭も列席。それ以降は、静寂が続いている。

 六代目山口組では、髙山若頭邸が銃撃された翌日(2月3日)に重要通達を出し、傘下組員らに行動の自粛を呼び掛けた。その反面、7日には弘道会内で松山猛・十代目稲葉地一家総長が若頭補佐から統括委員長に昇格するという新人事を発表。武闘派の野内正博若頭を、松山統括委員長がサポートする体制となり、不気味さも感じられたのだ。

「六代目山口組が『公共の場での暴力沙汰』と『組事務所などへの発砲』を禁止し、一見すると抗争激化に歯止めを掛けた格好だ。しかし、あくまでカタギに迷惑を掛けないためであり、神戸山口組と対立するなという意味ではない。
 弘道会の体制固めにしても、攻撃に打って出る予兆に思えてならない。分裂後の射殺事件では、稲葉地一家から複数のヒットマンが出ているし…。分裂問題を収束させるために、攻撃を仕掛けるタイミングを図っているのではないか」(山口組ウオッチャー)

 また、武力行使だけでなく、政治的な動きも分裂問題に関係してくるという。

「髙山若頭は出所後、住吉会(関功会長=東京)など各関東組織を訪問した。稲川会(内堀和也会長=同)へは複数回訪れており、親密な関係を構築している。関東組織との結束強化に加え、2月16日の盃では山陽道の組織とも絆を深めた。
 都内で直系組織へのダンプカー特攻が起きた際には、六代目山口組は被害を受けた側にもかかわらず、即座に松葉会(伊藤芳将会長=東京)との事態収拾に動いた。こうした経緯を振り返ると、山口組の分裂抗争に他団体が参戦するようなことはないにしても、終結に向けて業界内の結束も欠かせないということが分かるだろう」(同)

 ヤクザ史上最大の抗争・山一抗争は、一和会の解散と山本広会長の引退によって終結したが、それまでには稲川会や三代目会津小鉄会が間に入って奔走した。

「業界内には、個人的にも六代目側と神戸側の双方と付き合いのある人物は複数いる。今後、調整役が出てくる可能性も否定できないが、まだそういった段階ではないとみられる」(同)

 膠着状態が続いているが、神戸山口組が存続する限り、組員5人以上の集結などを禁止する特定抗争指定は解除されず、間もなく延長を迎える見込みだ。

「六代目山口組にとって、警戒区域内での警備態勢や拠点の問題が続くのは、望ましくないはずや。それ以前に、髙山若頭の自宅に撃ち込まれた返しをどうするか、やな。組事務所への発砲を禁止したんやから、今さらダンプカー特攻もないやろ。血が流れることになるのか、警察も水面下の動きを警戒しとるようやで」(前出・関西の組織関係者)

 神戸山口組でも、酒梅組・吉村総裁が傷害と恐喝未遂の罪で起訴された翌日(2月18日)、関東から友好団体が兵庫県に入り、井上組長と顔を合わせたという。

 両山口組の“外交”と、“武装化”したともいえる新体制が、戦局にどう影響を与えるのか。不気味な沈黙が続いている。

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