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森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★育児休業は少子化を止められない

 2月9日の産経新聞が、育児休業の際に給付される「育休給付金」を休業前賃金の80%とする方向で政府が検討していると報じた。給付金には所得税や社会保険料がかからないため、手取りベースだと、育休を取得しても、収入がまったく減らなくなる。

 現行制度では、最初の半年が67%、その後の半年間が50%というルールになっているから、大幅な給付改善となる。ただ、問題はその財源だ。育休給付金は、雇用保険を財源としているから、給付を改善すれば、サラリーマン全体に負担が降りかかってくるのだ。

 産経新聞によると、「低迷する男性の育休取得率を増やし、少子化に歯止めをかけたい」のが政府の考えだという。少子化がストップするのであれば、負担増はやむを得ないと考える国民も多いだろうが、実は育休の取得促進は、出生率の回復にほとんど効果を持たない。

 女性が一生の間に産む子供の数と呼ばれる「合計特殊出生率」は、1972年の2・14から2015年には1・45と、43年間で32%落ちている。しかし、結婚した女性に絞って生涯に産む子供の数を推計した「完結出生児数」をみると、1972年の2.2から2015年の1.94へと、12%しか減少していない。いまでも、結婚さえすれば2人近い子供が生まれているのだ。

 つまり、少子化の原因の大部分は、結婚をしなくなったことなのだ。実際に、50歳時点での男性の未婚率をみると、1970年の1.7%から2015年の23.4%へと10倍以上に激増しており、その増加ペースは止まっていない。

 政府が本当に少子化に歯止めをかけようと考えているのなら、子育て支援ではなく、非婚化に手を打たなければならないのだ。

 非婚化の原因については、学者によって意見が異なっている。ニッセイ基礎研究所の天野馨南子准主任研究員の著書『データで読み解く「生涯独身」社会』によると、結婚しなくなった本当の理由は、「好きになる力」が減ったことだという。

 実際に結婚したカップルをみると、希望年収に届かない男性と結婚した女性は多数存在する。もちろん、低年収の男性が結婚できている事実を私は否定しないが、それはイケメンだったり、口がうまかったりするからかもしれない。イケメンでなく口下手の男性は、一定の年収がなければ結婚できない。実際、複数の調査で、若年男性の年収と既婚率は見事な相関を示している。年収1000万円台の男性の8割が結婚している一方、非正社員の平均である年収100万円台の男性は、6人に1人しか結婚していないというのが現実だ。

 なぜ、政府が育休給付金を増やすのには積極的なのに、所得格差を減らすことに消極的なのか。それは、育休給付金の増額は、雇用保険のなかでの所得の再分配だから財政負担がないのに対して、低所得者への給付を増やそうとすると、財政の負担が増えてしまうからだろう。財政による所得再分配の強化は、最終的に富裕層への増税につながってしまう。政府が本当に避けたいシナリオは、そうした事態ではないだろうか。

 生涯未婚率は、20年後には40%に達するという予測もある。国民の4割もが結婚できないのは、基本的人権の侵害だ。国会は、こうした問題をきちんと議論すべきではないだろうか。

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