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〈企業・経済深層レポート〉 大量閉店で暴かれたラーメンチェーン「幸楽苑」の致命的弱点

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提供:週刊実話

 大手ラーメンチェーン「幸楽苑」を運営する幸楽苑ホールディングスが、もがき苦しんでいる。1月末に発表された2019年4〜12月期の連結決算は、最終損益が9600万円の赤字(前年同期は13億円の黒字)。さらに、今年1月6日には、’19年12月から今年4月にかけて、全店の1割にあたる51店舗を閉店することを発表した。

 ’20年3月期決算では売上高が前期比1.7%増の420億円と対前年増収、増益を見込むものの、それでも経営の専門家からは「先行きが不透明」という見方が多いという。かつて「デフレの勝ち組」と言われた「幸楽苑」に一体何が起きているのか。

 まず、全国紙経済部記者が不採算店の51店舗が閉店に追い込まれた経緯を解説する。

「昨年10月、東日本を中心に各地に甚大な被害をもたらした台風19号の影響を、幸楽苑はもろに受けた。福島県郡山市にある幸楽苑最大の製造工場が浸水被害に遭い、同工場が操業停止に追い込まれたのです。これにより各店舗は食材確保ができなくなり、東北を中心に全店のほぼ半数にあたる約240店が休業に追い込まれたのです」

 11月に郡山工場は操業再開、休業店舗も順次営業を再開したものの、’19年8月まで11カ月連続で前年を上回っていた国内直営店の売上高は、10〜12月は対前年比マイナスに陥っている。

「一度、顧客離れが起きると急速な回復は難しい。そのため幸楽苑の経営陣は51店舗の閉鎖という思い切った策に打って出たのです」(同)

 長年幸楽苑をウオッチしている経営コンサルタントは、「そもそも幸楽苑の経営には致命的な弱点がある」と指摘する。

「というのは、幸楽苑はラーメン事業が全売上高の大半を占めているという経営体質なのです。’15年に人件費や光熱費の高騰に耐え切れず、目玉だった『290円中華そば』を中止すると客離れが起き始めました」

 客離れは「290円中華そば」廃止後、商品開発に力を注ぎ、チャーシューをボリュームアップした「極上中華そば」がヒットしても変わらなかった。

「加えて’16年の異物混入問題(従業員が調理ミスで切断した指の先端がラーメンに混入)によって、企業イメージが大幅にダウンしたことも重なり、’18年3月期は32億円の赤字になりました。つまり、幸楽苑はラーメンが売れないと経営が即行き詰まる企業体質なのです」(同)

 そのため幸楽苑は、数年前からリスクを分散する経営を進めていた。

 例えば、一時大ブームとなったステーキ店「いきなり!ステーキ」との提携だ。’17年10月にフランチャイズ(FC)契約を結び、幸楽苑の不採算店舗の一部を「いきなり!ステーキ」に変貌させていった。

 さらに’18年12月には、「いきなり!ステーキ」とライバル関係にある「焼肉ライク」ともFC契約を締結している。

「焼肉ライク」は焼肉大手の「牛角」創業者、西山知義氏が手掛けた「格安、おひとり様OK」の焼き肉店だ。爆発的にヒットし、東京中心に店舗を急増させている、いま最も勢いのある焼き肉店の一つである。

「このようにリスク分散経営を少しずつ進めていましたが、台風19号によって、経営危機が高まり、これまでの改革スピードでは幸楽苑は崩壊しかねない。それが今回の不採算店51店舗の閉鎖です」(同)

 今後は不採算店を「いきなり!ステーキ」や「焼肉ライク」といった新業態に変えていく方針だというが、この方針に飲食店関係者は「失敗する可能性が高い」と指摘する。

「立ち食いにして回転率を高め、本格的ステーキをリーズナブルな値段で食べられることで人気が爆発した『いきなり!ステーキ』ですが、客単価が2000円ほどで、ファミリー層には受け入れられませんでした。常連客たちからも日を追うごとに敬遠されはじめ、業績が悪化しています」

 勢いが失速した「いきなり!ステーキ」は、’19年11月に不採算店のうち44店舗を閉店することを発表した。そのため、幸楽苑は勢いのある「焼肉ライク」に比重を置き、そちらの店舗展開を重視する可能性が高いという。

「幸楽苑はもともと、郊外ロードサイド中心にファミリー層をターゲットとして店舗展開してきました。一方、『焼肉ライク』の出店地域は繁華街で、会社員や独身がメインターゲット。幸楽苑の客層や立地と明らかに異なる。仮に幸楽苑のロードサイド空き店舗に『焼肉ライク』がオープンしても、繁盛するとは思えません」(同)

 ラーメンに偏っている経営体質を変えなければいけない幸楽苑だが、そのやり方には疑問が残る。

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