今年は桜の開花が例年より2週間以上も早く、慌てて花見のスケジュールを変える人も多いだろう。そんな中、寒さが緩み始めるとつい昼間からウトウト。眠気のため集中力に欠け、仕事や勉強の能率が上がらないために、会社や営業先で後ろ指を差される。
本人自身は「やたら眠いのは季節のせい」と納得してしまい、病気とは思わない。また周囲の人も「弛んでいる」として済ましている場合が多い。ところが、日中の眠気は、夜の就寝時に“質の良い睡眠”が取れているかが問題であり、昼間の眠気要因に夜の睡眠障害が隠れている事が多い。
総合医療クリニックを営む医学博士・久富茂樹院長はこう説明する。
「シーズン的に言えば、花粉症による鼻詰まりなどで睡眠が浅くなる場合もあれば、逆に薬の副作用で昼間に眠くなることがある。また、季節の変わり目で体調を崩しやすく、加えて、新年度に入って職場環境が変わり、ストレスやプレッシャーなど“心労”の積み重ねによっても睡眠の質を落とします」
見逃せないのは、こうした裏に“睡眠障害”という病気が絡んでいるのに、それを見過ごし、発見を遅らせてしまうことだ。
ある患者の一例からもそれが浮き彫りになる。
都内に住む会社員Aさん(45)は、春先になると職場でよく眠くなる。とくに昼食を食べた後の午後は、必ずといっていいほど睡魔に襲われる。自分でも眠気が来たのがわかるが、どうすることもできない。「お前、イビキかいてたぞ」と同僚に告げられ、「また遊び過ぎか」と冷やかされることも度々。Aさんは太り気味だが、アルコールはほとんど摂らない。
困ったことに、職場だけでなく大事な営業先でも眠気に襲われる。商談相手を前にしながら、座った姿勢が崩れそうになるほどの睡魔が襲い、それを堪えるのに、脚をツネったり耳を引っ張ったり…。そんな苦い経験も何度かあった。
こんな状態だと、会社から見放されると思ったAさんは、思い切って病院の診察を受けてみてびっくり。医師に告げられた病名が『睡眠時無呼吸症候群』だった。
これは夜の睡眠中、呼吸が止まる無呼吸状態を繰り返すために睡眠の質が悪化し、熟睡できない。慢性的な疲労感と日中の眠気に悩まされるという病気である。
Aさんは以後、病院で治療を受けることになったが、医者から「もっと放っていたら脳血管障害、重症心不全などの重大な病気へと進行していた可能性がある」と言われ、大きなショックを受けたという。