森善朗がそれだ。ちなみに元首相でありながら、「衆院の定数を300にしろ、なんて簡単に言うけれど、比例代表をなくすとなれば与党の公明党は言うに及ばず、野党の共産党あたりは死に物狂いで反対してくる」と。
また、世襲制度についても「選ぶのは有権者であって、立候補するのは息子でも孫でもいいわけだ。それを制限するということ自体がおかしい」とも言い放っている。
森の“ご高説”は納得できる場合もあるが、政治の世界でも新しい風が求められている。世襲問題に関してはピント外れ。国民感情を逆なでしかねず、ひいては党益に反するのではないか。
国会議員の今夏の期末手当(ボーナス)を2割削減する歳費法改正案を、議員の心中では「何でそんなにカットするのか」と考えている者もいるかもしれない。これに反対すれば、そう遠くはない総選挙で国民から手痛いしっぺ返しを受ける恐れがある。だからやむなく、「全会一致」で改正案を国会で通した。
自民党の領袖の多くは、自らの派閥が第一、国民のことなど全く考えてはいない。その姿勢を変えようとしないことは、呆れるばかりなのだ。
このところ、自派の会合で「選挙は、いついつだ」と、あたかも自分が決めるかのような発言をする領袖もいる。マスコミは、それをおもしろおかしく取り上げるから、「どうだ、オレの言うことは影響力があるだろう」と増長させることになる。
政治資金規正法違反で起訴されていた、民主党の小沢一郎前代表の資金管理団体「陸山会」の公設第一秘書、大久保隆規被告がこのほど東京拘置所から約3カ月ぶりに保釈された。ユリの花束を抱えた拘置所を出てきた大久保の姿は、何か手柄を立てた後のように堂々としていた。
「小沢もこれで思い切り代表代行、選挙担当として動くことができる」
民主党のある幹部は胸を撫で下ろすかのように、そう言った。公判がスタートするのは選挙後との観測が流れているせいもあってか、民主党執行部の政権交代へのテンションは、一気にヒートアップしている。
勢いついでに、核実験をした北朝鮮への制裁はもっと手厳しくやるべき、との声まで党内から出てきている。
思想信条を異にする、同床異夢の者が集まる寄り合い所帯の政党が1つにまとまろうとしているのは、選挙があるから。それも勝ち戦(いくさ)が予想される。いまは、イケイケなのだ。
自民党の領袖たちの無責任な発言とは対照的に、総選挙を目標に一枚岩になりつつある民主党なのである。(文中敬称略)