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事件法廷「実母殺害事件の闇」(上)

 「何でこんな結果を招いてしまったのか。夢であればよかったのに…」。被告A子(48=仮名)の絶叫調の泣き声が法廷に響いた。東京地裁で4〜5月、娘が一緒に暮らす実母(84)を殺害した事件の公判が集中的に開かれた。
 起訴状などによると、事件が起こったのは昨年9月。自宅アパートでたった一人の肉親である母親の首を絞めた。精神科に通院していたA子を凶行に走らせたのは母親の何気ない言葉だった。

 母娘は都内の私鉄沿線某駅から歩いて15分ほどの2階建てアパートを借りていた。2DKで家賃は月6万円。閑静な住宅街にある優良物件だ。
 事件当日、なじみの中華料理店から出前をとった。「焼きそば」と「チャーハン」を2つずつ、昼・晩ごはん用にまとめて注文した。高齢の母娘の2人暮らしは、世間の好奇の目を避けるようにひっそりとしていた。
 A子は母親とチャーハンを食べ終えると昼寝をした。夕方近くになって母親に起こされる。
 「薬を多く飲みすぎたんじゃないの?」
 母親はいびきをかいて熟睡していたA子を心配した。以前に大量の薬を服用して救急車で運ばれたことがある。しかしA子は「飲みすぎてなんかいないわよ。どうして信じてくれないの!」と食ってかかった。
 母親は「あんたに子どもでもいたらグウグウ寝てないのにね」と皮肉交じりに返した。A子は逆上した。
 母親の胸ぐらをつかんで激しく揺する。母親の後頭部が壁にぶつかり仰向けに倒れた。近くにあったテーブルの足で頭などを何度も殴り、さらに皮製ベルトを首に巻きつけ絞めあげた。
 A子の通報で事件が発覚した。

 法廷でのA子は実年齢より老けて見えた。グレーのトレーナー上下に丸メガネ。およそ殺人とは結びつかない小柄で地味な女性である。入廷時には、検察官、弁護人、傍聴席にまで頭を下げた。
 殺害を認めつつ「殺意を持っていたわけではない。ベルトで首を絞めたことは結果的には事実だが、その過程ははっきり記憶していない」と供述。弁護人は「犯行当時は心神耗弱状態にあった」と傷害致死罪を主張した。
 裁判の争点は、A子の殺意と責任能力の有無に絞られることとなった。

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