低血糖とは、血糖値が異常に下がる病気のことをいう。お茶を飲むなど、そこに含まれている成分で徐々に下げるのならいいが、きちんとした治療をしないと、心臓病や致死性の不整脈、うつ病、パニック障害などに陥るといわれる。軽度な糖尿病、糖尿病予備軍の人たちも、認識を新たにする必要がある。
糖尿病はインスリンの量が不足するせいで高血糖になるので、「血糖値さえ低めに抑えればいい」と思われてきた。だが、医療関係者に言わせると「それは“過去の常識”」だそうで、最近の研究では、その常識を超越する疾患が出てきているというから要注意だ。
糖尿病治療の本来の目的は、高くなった血糖値を下げること。そのために薬やインスリン注射などがあるが、過度の高血糖医薬治療を行ったり、インスリンが必要量を上回った時に、低血糖症という重大な副作用を引き起こす危険な状態になる。
また、激しい運動や空腹時が続いたり、お酒を飲んだりしたときも、同じように血糖値が低い状態になることを認識しておこう。
「厄介なのは、こうした状態でありながらも、本人が自覚症状を感じない場合も多く、そこに危険性が潜んでいるんです」
こう説明するのは、都内で循環器系のクリニックを開業する医学博士・浦上尚之院長だ。
さらに低血糖についてこう述べる。
「低血糖は、糖尿病で最も警戒すべき病気といえますね。血糖値が下がり過ぎることによって、心臓病などのリスクを高めます。低血糖になると交感神経が優位になり、心臓の太い動脈がけいれんして細くなる冠動脈れん縮を起こします。その結果、致死性の不整脈が起きることがあり、血管内のプラーク(じゅく腫)を破たんさせ、血栓ができやすくなるのです」
血栓ができると動脈硬化などの重大な疾患が起きやすくなるが、低血糖の初期症状は人によって違いがある。
口の周囲がしびれたり頭痛、吐き気、物が二重に見える複視などの症状が起こることが多い。そして、次に動悸、冷や汗、手の震えなどが現れる。さらに空腹感に襲われ、眠気やだるさ、イライラ、頭痛などを感じて頭の働きも低下、考えがまとまらないなどの症状が起きる。
ただ、初期症状であれば、ジュースを飲んだり角砂糖などの甘味の物を食べたりすると、10分〜15分で低血糖の症状は改善する。その量もさほど多く摂る必要はない。
健康な人の血糖値は、だいたい60〜140mg/dlの範囲に収まっている。低血糖は血糖値が60mg/dl以下になると発症するといわれる。また、普段の血糖値が高い人の場合、急激な血糖値の低下が起きると、60mg/dlより高くても低血糖の症状が現れることがある。
さらに、50mg/dl以下になると中枢神経の働きが鈍くなり、30mg/dlより低くなると、意識がもうろうとして昏睡状態に陥る。こうなると命の危険があり、医療機関の手当を早急に受けなければならない。