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呼吸の乱れは健康に悪影響! 玄侑宗久氏が説く「座禅の呼吸法」(1)

 現代人の呼吸は乱れているという。呼吸の仕方が悪ければ、自ずと健康を損なうのは明らかだ。その昔、江戸中期の禅僧・白隠禅師は、若かりし頃、厳しい修行で体を壊しノイローゼに陥った。そのとき、丹田(たんでん=気からなる丹を耕す田のことで、ヘソの辺りを指す)に気を集中する呼吸法により治癒したという話が、自身の記した『夜船閑話』の中に登場する。今回は健康の基本中の基本である呼吸法について、臨済宗福聚寺住職で芥川賞作家の玄侑宗久氏にうかがってみた。わかりやすく一問一答形式でお届けする。

 本題に入る前に、まず玄侑氏についてご説明しよう。福聚寺は創建680年の古刹。桜で有名な福島県三春町にある。同町は、1年前の東日本大震災で福島原発に近いこともあってかなりの影響を受けた。玄侑氏は政府の復興構想会議の委員を務めるなど、被災者のケアに奔走する毎日を送っている。
 その玄侑氏が、こう語る。
 「大震災から1年。現在のストレスや精神的なショックは、心では故郷に戻りたいが頭では戻れない、という精神的な分裂として表れています。人々を見ていると、呼吸が浅かったり、せわしくなったりする傾向があります。ずっと私たちが気にしているのは、放射能による活性酸素の発生です。呼吸に加えて、放射線が体内をよぎるごとに活性酸素が発生するわけですが、活性酸素はガンや生活習慣病を引き起こすといわれています」

 −−まず始めに、坐禅の呼吸法の要点を一言でいうと、どうなりますか。
 「坐禅の呼吸は、深く、長く、滑らかに行うのが原則です。坐禅の最中は、呼吸の回数が減るという現象が起きます。また、坐禅は脳の状態にも影響を及ぼし、言語や計算などロジカル(論理的)な思考をストップさせます。脳がロジカルに動くと、食べた栄養の30%もの消費をするほか、重心が高くなります。つまり、坐禅は呼吸や思考の無駄を省く作業をしていることになります」

 −−言語や計算などのロジカルな思考を止めるのは、なぜですか。
 「坐禅がロジカルな思考を排除する理由はいろいろありますが、一つは、思考を止めれば、それだけストレスや体の負担が減るということです。もっと詳しくいえば、言葉を考えているというのはどんな状態かというと、考える材料はすべて過去のものですから、言葉を考えているときは過去に属している状態です。未来について考えることも過去の材料に基づきますから、これも過去の領域です。過去や未来ではなく、いま生きている状態に自分を晒すことが坐禅なのです」

 −−吸うよりも、吐くほうが大事なのですか。
 「坐禅の呼吸は吐くほうを重んじます。人は吐くときに脱力、リラックスするからです。密教の呼吸法では、息が止まっている時間を重視しますが、自分で行うのは危険で、実行する際は専門家の指導を受けることになります」

 −−坐禅の場合は、やはり鼻呼吸ですか。
 「そうです。深く、長く、滑らかにというのが原則ですから、口ではなく鼻で呼吸します」

 −−息を吸って、吐く時間はどれくらいですか。
 「吸う時間は自然に、吐く時間は長くします。1回の呼吸時間は、初心者の方には、だいたい15秒程度で呼吸してくださいと指導しています。吸うのが2〜3秒、吐くのが12秒くらいですか。慣れてくれば、30秒を超えるほど長くなります。そのとき注意してほしいのは、時間や規則性に縛られる必要はないということです。ときどき生真面目な方が時間や規則性にこだわり、かえって呼吸が乱れてしまうことがあります。無理な呼吸になった場合は、別に息継ぎを入れてもかまいません。楽にして呼吸を続けることが大切です」

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