番組では前日に続き、日本時間の27日に行われる米朝首脳会談に向け、北朝鮮・金正恩委員長の動向を詳しく紹介する内容。専用列車から降り、レッドカーペットを歩く様子を放送すると、金委員長のコメントを紹介した上、駅で出迎えたベトナム関係者がスマホで自分を撮影しようとしていたなどと、まるでスターでも現れたかのようなテイストで紹介する。さらに、金委員長がベトナム国民から歓迎され、現地の老人が「金日成(元国家主席)は我々の友人」と涙を流す様子も放送した。
そして、現地レポートでは「金委員長の一挙手一投足に注目が集まるわけですが、追いかけるのは結構大変です」とまるで祭りでも開催されるような「はしゃぎ」ぶり。そこには、これから日本の平和を揺るがしかねない重要な会談が行われるという緊張感は全くなく、北朝鮮がアメリカの大統領と会談できることに喜ぶかのような印象を与える論調だった。なお、トランプ大統領の映像は、飛行機に乗る数秒のみ。金委員長は約10分だった。
スタジオに戻ると、富川悠太アナウンサーが笑顔で、「いろいろなカードをどうやって出し合うのか」とゲームを見るかのような発言。さらに、解説員も「核を捨てろ捨てろと言われても攻められたらかなわない。体制を維持してほしい(と北朝鮮は考えている)」という北朝鮮目線のコメントを行う。
その後も富川アナと解説員は、北朝鮮・韓国の立場に立った発言に終始。富川アナは「北朝鮮としては経済制裁解除してくれよと思いますよね」「外貨を得たいですよね」などと話を進める。2人の会話に「日本としてどうなのか」「日本にどのような影響が出るのか」という話は殆ど出ず、徳永有美キャスターがかろうじて「拉致問題」を口にしたのみ。
解説員は徳永キャスターの指摘について、「決めるのは米朝。日本は見ているだけですね」などと私見を述べる。富川アナは日本についてはほとんどコメントせず、最後に「トランプ大統領は既にハードルを下げていますよね」と北朝鮮にアメリカが譲歩したとし、それを喜ぶかのような発言を行った。
この異常とも思える放送に、一部の視聴者は「どこの国の放送局なのか?」「富川はなぜそんなに嬉しそうなのか」などと激しく憤る。さらに、日本にとっては拉致加害者であり、ミサイルを打ち込むなど、平和な国民生活を脅かす存在であるはずの金委員長を「歓迎されている」などという切り口で取り上げ、まるでお祭りでも開催されるかのように報じたことについても、怒りを口にするネットユーザーが多かった。
米朝首脳会談についての認識は人それぞれだろうが、北朝鮮は経済制裁を行っている国であり、日本は様々な形で被害を被っていることは、紛れもない事実。拉致被害者も番組を目にする環境で、日本のテレビ局が北朝鮮側に立ったような報道をすることが適切と言えるのだろうか?
少なくとも、多くのネットユーザーはその報道姿勢に違和感を覚えたようだ。
文 神代恭介