「監督は絶対に無理。人望がない。それぐらいの判断能力はある」
引退会見でクールに自己分析してみせたイチローは、さらに、「日本ではアマチュアとプロの壁が特殊な形で存在している。そこに興味がある」と言及。もっと高いレベルで野球改革に取り組む考えを明かした。
監督にならない理由は、それだけではない。メジャーリーグの有名選手は、引退後あくせく働くようなことはせず、自分で生きがいを見つけて暮らすことがほとんど、という事実も影響しているだろう。
「米国で監督やコーチをやる可能性はゼロです。メジャーの監督の報酬は1〜3年目が80万ドル程度、コーチは20〜50万ドル程度がほとんど。金銭面でもメリットが少ないからか、メジャーでスター選手が監督をやることは、ほとんどありません。今後はとりあえずマリナーズの会長付特別補佐の肩書に戻り、球団の歴史の面での顔になると、米国では予想されています。メジャーはオールドタイマーズ・デー(OB選手の顔見世イベント)や歴史に関連したファンサービス・イベントがしょっちゅうあるので、けっこう出番はあるはず。会長特別補佐は名誉職なので、サラリーは推定で5万ドルくらいでしょう」(メジャーリーグ評論家・友成那智氏)
そんなイチローについて、菅義偉官房長官は、国民栄誉賞授与を検討していることを示唆。球界で国民栄誉賞を受賞したのは王貞治氏、衣笠祥雄氏、長嶋茂雄氏、松井秀喜氏の4人のみ。イチローは2001年と’04年、非公式に同賞の打診を受けていたが、「現役」であることを理由に辞退していた。
しかし、今回の引退でその垣根が取れ、政府は7月の参院選挙へ向けて授与を目論んでいるのだ。
「国民栄誉賞を背負ってしまうと、切った、張ったの世界を生きる監督はさらに難しくなります。球団が、成績不振を理由に即解雇とはいかないからです。だから、イチローも監督への転身をきっぱり否定したのです。しかし、現場を離れて、フロントサイドに回れば支障はありません。今回、受諾する方向なのは、そのためです」(スポーツ紙デスク)
そんなイチローについて、熱い視線を送るのがオリックスの宮内義彦オーナー(83)だ。3月13日、宮内オーナーが大阪市内で開かれた球団の激励パーティーでの「冥土の土産」発言が“鍵”となる――。
「私も相当、年になりました。冥土の土産がないままに閻魔さんに会うのは非常にまずい。早いこと土産を作ってほしい。個人的に少し焦っている」(宮内氏)
当初、日本開幕戦を最後に引退するイチローを監督もしくは選手として迎えるためのラブコールとみられていたこの発言。だが、イチローが監督転身を明確に否定したことで、新たな展開が透けて見えてきたのだ。
「宮内オーナーは“球団トップ”として獲得する方向に転じたのです。それも、GMレベルを飛び越して、自分の後釜となるオーナーに。日本プロ野球初となる、ユニホーム出身組の球団オーナーとなれば、プライドが高いイチローの面子も十二分に保てます。彼の性格を知り尽くしている、宮内氏らしい選択と言えるでしょう」(前出・デスク)
(明日に続く)