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おやじ雑学 静かなブーム「田舎暮らし」理想と現実(2)

 自分の夢を追求したくて田舎へ移った人もいる。長野県富士見町で『バディアス農園八ヶ岳農場』を営む鈴木康晴(59)さんだ。
 「ここに移住して8年がたちました。この地で偶然に出会った食用ほおずきを町の特産品にしようと、毎日苦労と工夫の連続です」
 その日焼けした顔には自信がみなぎっていた。

 鈴木さんは富士山、南アルプス北岳、そして北アルプスの奥穂高岳を望む絶景の地で、南米ペルー原産の『太陽の子』という食用ほおずきを栽培している。糖度が高く酸味もあり、マスクメロンに似た風味。フランスやイタリアでは、料理やスイーツの素材として普通に利用されている。
 日本で栽培されるようになったのは平成に入ってからで、鈴木さんはその第一人者。日本全国へ自分ひとりで販路を開拓し、同時に栽培法を紹介している。

 鈴木さんに田舎暮らしのモットーを聞いた。
 「田舎生活を目的にしてはダメ。それは手段であって、人生の目的は別に持たなければいけません」
 何をやるために田舎へ移るのか、その目的が大事だという。

 東京でサラリーマンをしていた鈴木さんは、40歳を迎えるころから土になじむ仕事に憧れを抱くようになった。自分の人生を自分で切り開く−−そんな思いがどんどん膨らみ、長年続けてきた生活に終止符を打つ決意をした。
 48歳のとき、下の子どもが学校を卒業したのがいい機会だったという。奥様は反対したが、子どもたちが背中を押してくれた。

 鈴木さんのチャレンジ人生がはじまった。会社を辞めて静岡県の農林大学へ入学。農業の基礎から学び、同時に農業高校の臨時職員として高校生と共に畑仕事に精を出した。
 これらの経験が農業の具体的なノウハウを身に付ける助けとなり、体力づくりにも役立った。

 その後は、アルバイトで資金を貯め、富士見町への移住を決めた。
 「農業をするには体力が必要です。始めるなら、できるだけ若いうちがいい」
 鈴木さんの笑顔は実にまぶしい。

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