今季、原監督は2年契約の最終年を迎えた。読売グループが次期指揮官として本命視する松井秀喜氏(40)からは、色よい返事をもらえていない。開幕前の激励会で渡辺恒雄・球団最高顧問(88=読売新聞グループ本社会長・主筆)が“続投もあり得る”とするニュアンスの発言をしたのは、そのためだろう。
しかし、川相昌弘ヘッドコーチ(50)の存在がクローブアップされてきた。原監督がインフルエンザB型に感染し、その留守を預かった間の成績は4勝1敗。首位戦線浮上の足場を作ったと言っても過言ではない。それに対抗するように、原監督から“来年以降”の意識がにじみ始めた。
「4月18日の阪神戦、川相監督代行は1点ビハインドで迎えた7回表、先頭打者の村田が四球を選ぶと、迷わず代走のスペシャリストである鈴木尚広を投入しました。次打者の犠打失敗などで得点にはつながりませんでしたが、早めに仕掛けた作戦は間違っていない。守護神の呉昇桓が出てきてからでは、得点のチャンスはますます少なくなりますからね」(ベテラン記者)
読売内部には少数だが、原監督から一気にゴジラ松井への継承を不安視する声もないわけではない。
「小林誠司、大田泰示、岡本和真らの若手野手が一人前に育っていません。阿部、村田、井端、高橋らのベテランにまだ頼りきった状況にあり、世代交代の過渡期を松井氏に託すのは気の毒な話です」(球団関係者)
そうなると二軍監督も歴任し、中堅、若手をよく知る川相ヘッドの存在が注目されてくる。川相ヘッドの昇格なら、「次はスムーズにゴジラ松井へ」の図式も消えない。川相ヘッドが世代交代を進め、本命・松井氏で長期政権−−なる継承も見えてくる。ところが…。
「昨季、米大リーグのトロント・ブルージェイズでプレーしていたホアン・フランシスコ内野手の緊急獲得は、明らかに原監督の意向に沿ったものです。原監督は左バッターの加入を以前から求めていました」(前出・ベテラン記者)
次世代のクリーンアップを担う大田、岡本は右打者だ。27歳とまだ若いフランシスコの獲得は“次”を見越してのビジョンでもあり、同時に現有戦力に対しても意味のあることだという。
「守備位置は一塁か、三塁。スタメン落ちの煽りを食うのは、村田修一か、阿部慎之助。村田の不振が長引くようなら、5月2日の阪神戦からスタメンで使ってくるでしょう」(同)
次期指揮官ではなく、原監督自らがベテラン切りのかじ取りを始めたとも言えるのだ。