まず、受注拡大の波に乗るのは、ビール・飲料各社だ。
「どのメーカーも、事前に今年の夏は猛暑になることを見込んで、前年同期比1割程度の増産を計画していました。しかし実際には、その想定をはるかに上回る暑さとなり、そこからさらに生産計画を上積みしている状況です」(飲料メーカー関係者)
キリンビールでは、もともと7月において、ビール類全体で前年同期比1割の増産を計画していたが、7月下旬以降は2割増に引き上げることを決定している。
「特に今年3月に発売した第3のビール『本麒麟』(350ml缶、500ml缶)が、6月下旬の時点で年間販売目標にしていた510万ケースの7割を突破。そのため年間710万ケースに上方修正したが、この調子であれば、さらに上乗せもあるのではないかと見られている」(同)
さらにキリンでは、ビールのメーン商品である『一番搾り』などを昨年比で1〜4割の増産体制を取っているという。
「また、第3のビールではアサヒビールも『クリアアサヒ』を7〜8月で5%増産に打って出る。サントリーも、主力ビールの『ザ・プレミアム・モルツ』を前年同期比で2割増に引き上げ。若者のアルコール離れが進む中、ここぞとばかりに需要の取り込みに躍起になっているのです」(業界紙記者)
そのアルコール分野では今、RTD(レディ・トゥ・ドリンク)も好調だ。RTDとは、缶酎ハイなどの、割らずにすぐ飲めるアルコール飲料のこと。
「RTDでは、アルコール度数7〜9%を中心に右肩上がりで、'17年度が売上高約3400億円。価格の安い酒で早く酔いたいという中高年層を中心に受けて、2桁成長を続けていた。それが、この酷暑で伸びに拍車がかかっています」(同)
熱中症が心配される中、清涼飲料やアイスの販売も急増。例えば、キリンビバレッジの塩分補給清涼飲料水『ソルティライチ』の7月の販売量は、7月23日現在で前年比で約2割増だという。
「コカ・コーラボトラーズジャパンが凍らせて販売しているスポーツ飲料『アクエリアス冷凍ペット』も、この暑さで需要が販売計画を上回ってしまい、品薄状態が続いている。そのため本州、九州、四国などでは一時休売の処置を取った。ポッカサッポロフード&ビバレッジでも、熱中症対策飲料の『キレートレモンCウォーター』が前年比3割増の生産でも追いつかないほどだという。赤城乳業も大ヒットアイスで年間5億本売り捌く『ガリガリ君ソーダ』が、7月中旬時点で3割程度伸びているというから驚きです」(大手スーパー関係者)
夏に欠かせない家電製品のエアコンも、もちろん需要が高まっている。
「エアコンは今年、どの家庭でも早い段階からフル稼働しているためか故障が増え、それが買い替え需要につながっています」(家電量販店店員)
では、どれぐらい伸びているのか。
「ヨドバシカメラのAkiba店では、7月販売が対前年比5割増。ビックカメラ全体では前年同期より6〜7割増。ケーズホールディングスでも、エアコンなど冷房製品が6〜8割増。メーカーでいえば、ダイキンなどは今年、国内外で過去最高の755万台の売上を見込む勢いです」
プールのあるレジャー施設も大賑わいだ。東京都の『としまえん』では、7月の入場者数が7月22日現在で6万5000人と、前年より2割弱増えているという。
「ほか、暑すぎることから屋内用プールがあるホテルも人気で、例年になく予約が多いといいます」(ホテル関係者)
百貨店などでの売れ行きで目立つのは日傘などだが、女性用では例年の2割ほど売れ行きが伸びている。
「目新しいところでは、今年は男性用日傘を買い求める若いサラリーマン風の人が多い。暑さで倒れ、職場に迷惑をかけたり、日焼けしすぎて見た目違和感が出てしまうのを避けたい、との声も多く聞こえてきます」(同)
ドラッグストアなどでは経口補水液や制汗剤なども飛ぶように売れている。
「経口補水液は通常ではやや高めなので、なかなか売れない。だが、今は水と電解質を素早く補給できるというので熱中症予防で伸びている。出荷数が対前年比の2倍と聞きます」(ドラッグストア関係者)
大手生保関連のシンクタンク調査によれば、夏場の気温が1℃上昇すると関連消費は約3000億円押し上げられるという。つまり3℃で約1兆円ということ。酷暑恐るべしだ。