そこで意見が分かれるのが、立川志らくのポジションだろう。昨年はジャルジャルに「一つも笑えなかった」としながら99点を付ける、ゆにばーすに「ものすごい面白い感じがするけどそれほどでもなかった」、かまいたちに「上手さを感じすぎてしまった」など混み入ったコメントを行い、ネット上では「何を言っているかわからない」「コメントと点数が合っていない」といった非難を浴びてしまった。
だが、これは師匠である立川談志を意識したものでもあると言えるだろう。談志は2002年の第2回大会で審査員を務めている。おぎやはぎに「(リーガル)千太・万吉を思わせる」とマニアックな芸人名を出し、テツandトモに「お前らここへ出てくる奴じゃない」といった一見すると場にそぐわないようなコメントを連発していた。ただ、いつもの談志節でもあったとも言えるだろう。
近頃の『M-1グランプリ』は、復活後から出場制限が芸歴10年から15年に拡大されたことにより場、数を踏んでいるベテラン芸人が多く見られるようになった。さらに、昨年の優勝コンビである霜降り明星に顕著なように、制限時間内ボケをどれだけ詰め込むかといった密度などのテクニックが評価される傾向もある。その分、審査内容も予定調和的なものになりつつあるのは確かであろう。
とろサーモンの久保田かずのぶから「好みで審査している」と批判された上沼恵美子や、談志譲りのセンスを見せる志らくなど、「独自の評価眼」も必要と言えるかもしれない。ネット上でも「志らくのコメントって落語家としてはまっとうだと思う」といった声も聞かれるだけに、『M-1』のもう一つの楽しみだと言えるだろう。