直線半ば、ハンデ戦らしく横一線の状態で各馬が激しく競り合っているところを、緑の帽子が大外から猛然と追い上げてくる。アッという間に内の集団をまとめて交わすと、脚色が衰えることなくゴール板を駆け抜けた。混戦ムードが漂っていた新潟記念は、16番人気の伏兵・アルコセニョーラが大金星をさらった。
大波乱の立役者・武士沢騎手は当初、この日は札幌で騎乗する予定だったが、お手馬のダイワマックワンがキーンランドCで除外対象となり、セニョーラ陣営から依頼が舞い込んできた。
「急きょ乗せてもらえてツイてました。未勝利のころに調教で乗ったことがあったけど、最終追いでまたがった時は馬がしっかりしたなあという印象でした。一瞬の脚を生かす競馬が合うと思ったので直線残り四百まで我慢したら、思った通りの脚を使ってくれました」
運命のいたずらとでもいうべきか…人馬ピタリと呼吸の合ったレースぶりを振り返ると、まさにセニョーラは“最愛”のパートナーを屋根に迎えた格好となった。
「うまく内から外にさばけたし、馬の状態も良かったんでしょうね。2度目の重賞を獲れてうれしいです」と武士沢騎手は中堅らしく、しみじみと喜びをかみ締めていた。
一方、「強い競馬だった。今まで何をやってたんだというぐらいにね」と周囲の笑いを誘ったのは畠山重師。「ずっと調子は良かったんだけど、春先は何回かフケがあったりしたし、牝馬の難しさみたいなところもあったのかもしれない。きょうは体重が減っていなかったし、装鞍所からおっとりしていたから力を出せたのかな」と勝因を分析した。
それにしても、この激走はファンのみならず、陣営にとっても“まさか”だったに違いない。次走については「まったく考えてなかったから、これから決めるよ」と素直に胸の内を明かしたトレーナー。うれしい誤算(?)に、照れ笑いを浮かべるシーンが何度も見られた。
しかしながら、8月の最終週は天気もそうなら、競馬も札幌(キーンランドC)、新潟で大荒れ。ゲリラ豪雨に続いて馬券で災難に遭った方もさぞかし多いことだろう。そしてまた今日9月1日が「防災の日」というのは偶然にしては出来すぎ!?