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本好きオヤジの幸せ本棚(74)

◎オヤジ人生にプラス1のこの1冊
『ヤマの疾風』(西村健/徳間書店 1680円)

 ミステリーという文芸ジャンルを極めて狭く捉える人が、この世には少なからずいる。シャーロック・ホームズ、あるいはアガサ・クリスティが生み出したエルキュール・ポアロのような、いわゆる名探偵が殺人事件に挑み、背後に隠れていた謎を論理的に解き明かしていく物語のみがミステリーだ、と考える人たちである。
 しかし、狭い見方から解放され視野を広げれば、そんなことはない、と思い至ることだろう。前回紹介したダシール・ハメットやレイモンド・チャンドラーが残したハードボイルド・ミステリーには謎解き以外の魅力が満載である。裏社会における暴力。これもまたミステリー特有の面白さに含まれる。なので、ミステリーとヤクザ映画は仲間と言っていい。もっと正しく言うと、ハメットやチャンドラーの影響を受けて作られたのが日本のヤクザ映画なのだ。このあたりの歴史認識がはっきりしている作家が西村健である。
 2005年〜'06年に刊行した『劫火』ですでにその認識を証明していたのだが、本書でも十分に伝わってくる。昭和40年代の九州・筑豊。炭鉱の町を舞台にして、犯罪に手を染めるチンピラの青春とヤクザ組織の抗争を描く作者の頭の中には、高倉健に対する尊敬の念があったはずだ。ミステリーでありかつヤクザ小説である本書は、まさしく極上のエンターテインメントだ。
(中辻理夫/文芸評論家)

◎気になる新刊
『楽天イーグルス 優勝への3251日』(山村宏樹/角川SSC新書・798円)

 首位から51.5ゲーム差の歴史的大敗を喫した1年目。戦力も設備も何もかも足りなかった球団は、どうしてここまで強くなれたのか−−。被災地と共に歩み、今季ついにリーグ優勝を成し遂げた楽天イーグルス感動の“軌跡”がここに!

◎ゆくりなき雑誌との出会いこそ幸せなり

 「日本抗加齢医学会雑誌」とお堅い印象を持つが、中身は参考になる『アンチ・エイジング医学』(メディカルビュー社/1575円)。医学とタイトルにある通り、寄稿している人は医師・製薬など医療関係者が中心だ。
 そうした専門家たちが、最新号では「サルコペニアとアンチエイジング」という視点からさまざまに解説している。
 サルコペニアとは加齢による筋肉量の減少のことで、つまり筋力の“衰え”を指す。日常生活の至るところに衰えを感じている50代以上のオヤジには身近なテーマだ。では、その原因は、そして対策は…といった内容で誌面が展開、専門的知識のない一般読者にも理解できる。
 また「百寿者に訊け」というインタビューコーナーでは、100歳を迎えたご長寿が元気の秘訣を語る。最新号では東京在住の女性が登場。「趣味は読書」と笑顔で話す姿は“長生きってイイ”と思わせる。偶数月1日発売の隔月刊誌。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
 ※「ゆくりなき」…「思いがけない」の意

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