「1月5日の大手民間信用調査会社・東京商工リサーチの発表を見ると、飲食業不況は一目瞭然。昨年12月末までの調べで、'17年の倒産件数は762件(速報値)で前年から何と123件も増加。内訳としては、例えば、専門料理店の倒産が203件で対前年比13.4%増。食堂、レストランの倒産は、比率的には専門店より増えて対前年比34.2%増。酒場、ビアホールは35.2%増。喫茶店も34.0%増となっているのです」(経営アナリスト)
負債額5億円以上の大型倒産もある。例えば、都内中心に27店舗あったステーキ店『KENNEDY』の運営会社ステークスは、負債額13億8000万円で昨秋に倒産。東北地方を中心に宅配ピザ店『10・4(テン・フォー)』を展開していたオーディンフーズも、7億円の負債を抱えて昨年9月に倒産している。
「信用調査会社の数字では、倒産した飲食業全体の負債総額は416億円と、前年から80億円増加しています。750件を超えたのは3年ぶりで、ここ20年ほどでは'11年の800件がピークでしたから、それに迫る勢いでの倒産となっているのです」(業界関係者)
なぜ、飲食業の倒産が増えているのか。先のアナリストは、こう分析する。
「原因別では、最多がズバリ全体の8割を占める販売不振。その不振要因としては、まず仕入れ価格が高騰していること。昨年は野菜価格が安定せず、そのほかの調味料や材料費も数円単位で徐々に上がるなど、仕入れ価格が年々上がっている。さらにもう一つ、コストを上昇させているのが人件費。アルバイトでも地域によっては昨年より時給が200円前後も上がり、1000円を超えるところも増えている。しかも、アップしても人が集まらない。そのため、さらに人件費を上げざるを得ないという悪循環が続いているのです」
加えて最近では、さらに深刻な状況がプラスされつつあるという。
「コストをかけ、新メニューを打ち出したり、趣向をこらして一時的にブームは来ても、顧客はすぐに冷めてしまう。そのため、またコストと時間を割いて違うものを提供しなければならない。そうして次第に体力がなくなっていく」(同)
ビジネスモデルの短期化という点では、前出の『KENNEDY』が当てはまる。
「『KENNEDY』はもともと、ステーキ店の高い敷居を下げ、カフェ感覚で食事ができることから、一時、人気を博しました。ところが、その後、ペッパーフードサービスが『いきなり!ステーキ』の立ち食いスタイルで新規参入。早くて安く、顧客の目の前で注文に応じて肉をカットするという従来になかった斬新さも受け、快進撃を続けた。これで『KENNEDY』のスタイルはアッという間に古くなってしまい、値引きサービスを繰り返しているうちに収益が悪化してしまったのです」(外食産業関係者)
しかし、先のビジネスモデルの短期化もさることながら、飲食業の不振の原因を突き詰めていくと、何といっても消費者の外食の手控えが効いているという。日本フードサービス協会が出した数値によれば、国内外食産業は'97年の約29兆円をピークに市場は縮小し、現在は25兆円前後と伸び悩んでいる状況だ。
「個人所得が増えないために、外食に注ぐ金が減り続けているのは事実で、その金は税金、教育、医療などに回っている傾向が強い。その代わりに、家族でショッピングモールに行くついでに、そこで食事を済ませてしまう場合も多い。さらには、コンビニやスーパーで出来上がったものを購入して自宅で食べる、いわゆる“中食”の人が増えていることも、少なからず影響しています」(前出・経営アナリスト)
ただし、節約志向もあることはあるが、最近では、本当に美味しくて、ある程度のお金を支払っても食べたいというものがあれば、客はそちらに動く向きも強いという。
「顧客のニーズはどんどん多様化し、すでに単に安ければいいというだけでは通用しない。いい例が吉野家を中心とした牛丼チェーンのバトルで、価格競争にハマり込むと結局は体力を失い、時にはサービスも低下して客が離れていく。顧客が納得できる価格とスピーディーな展開が同時に求められる上で、このご時世、安定した人材確保を持続していかなければならないため、相当厳しい生存競争となっているのです」(同)
飲食業にとっての冬の時代はしばらく続きそうだ。