今場所、星数はともかく「優勝さえすれば横綱」という、これまでよりも緩い条件を掲げられていたが、いきなり黒星発進。3日目にも2つ目の黒星を喫し、大関同士の豪栄道戦も負けて、貴乃花が引退して以来13年半も途絶えている“和製横綱”の誕生を待ちわびていたファンや関係者をがっかりさせた。
とりわけ、協会関係者の落ち込みようはひどかった。八角理事長(元横綱北勝海)も、初日の波乱の主役が自分の愛弟子である前頭筆頭の隠岐の海(31)だったにもかかわらず、まるで稀勢の里応援団長のようにがっくりと肩を落とし、「最後まで粘り強くいけば、まだチャンスは出てくる」と懸命にエールを送る始末。
それにしても、どうしてこんなに協会関係者が新横綱誕生に必死になるのか。今場所も大相撲人気は沸騰。初日の3日前に相撲協会は早々と15日間全部の前売り券の完売を発表している。この人気を不動のものにするために、今、なんとしても和製の目玉が欲しいのだ。
しかし、その大本命である稀勢の里がつぶれてしまったらどうなるか。番付を見渡しても、稀勢の里に続く第2、第3のホープが見当たらないのだ。
「十両の人気者の宇良も、幕内上位で大暴れするような器ではない。今場所、横綱、大関を次々に倒して大旋風を巻き起こした隠岐の海も、来場所はどうなるか分かりません。改めて見てみると、本当に大相撲界は玉不足なのです」(担当記者)
3横綱はいずれも30代。稀勢の里もすでに30歳を超し、たとえ横綱に上がったとしても、長期政権は築けない。
秋場所を見る限り、日本人横綱への可能性を感じさせてくれるのは、今場所小結に復帰した高安だ。幕内では、遠藤が盛り返してきた。これがホンモノなら、綱への可能性がないこともないのだが…。
「日本人横綱は誰が、いつ?」相撲協会の咆哮はしばらく続きそうだ。