UFO未確認を閣議決定したきっかけは、民主党の山根隆治参院議員の質問主意書だった。
山根氏が「UFO目撃情報が後を絶たないが、国民的な不安と関心からも確認作業は喫緊の課題だ」とただしたことへの回答だが、真摯に対応するためわざわざ閣議決定したとは考えにくい。
もっかのところ福田政権の支持率は急降下中。年金問題をはじめとするさまざまな政策課題について福田首相の反応は鈍く、国民は早くも見切りをつけようとしている。永田町関係者は「国民ウケを狙ったのだろう。支持率アップを狙ったパフォーマンスだ」とばっさり切り捨てた。
「山根議員は2005年の参院総務委員会でも、当時総務大臣だった麻生太郎氏に『UFOを見たことがあるか?』と質問している。ユーモアセンスのある麻生氏は『おふくろが見た、と興奮して帰ってきたことがあるが、私自身は見ていない』と切り返して国民的人気を得た。今回のUFO未確認の閣議決定は二番煎じの受け狙い」(前出の永田町関係者)
政府の答弁書は、航空自衛隊が領空侵犯の恐れがある航跡を察知した場合、戦闘機を緊急発進(スクランブル)させ目視確認すると説明している。ただ現時点では「鳥など航空機以外の物体を発見することはあるが、地球外からの飛来と思われる未確認飛行物体を発見した事例は承知していない」と強調。UFOとのコンタクトなどを否定した。
UFOについては「情報収集、研究は行っておらず、わが国に飛来した場合の対応についても特段の検討は行っていない」としている。
質問主意書を受理し、ここまではっきりとした政府見解を述べたUFO答弁書は奇異に映る。各党の議院運営委員会理事は事前に質問主意書の内容を確認することになっており、結果として話題づくりにひと役買ってしまった民主党も民主党だが、この機に乗じて政権支持率アップを狙った政府も政府である。
特にあからさまな受け狙い路線だったのが町村信孝官房長官だ。町村氏は18日午後の記者会見で、政府がUFOに関して「存在を確認していない」との答弁書を決定したことに冗談半分に“反論”してみせた。
町村氏は「政府としては存在を確認していないという極めて紋切り型の答弁しかない」と前置きしたうえで記者団にリップサービス。「私は個人的には絶対(UFOや宇宙人が)いると思っている。そうでないとナスカ(地上絵)は説明できないでしょ」と畳みかけた。根拠として南米ペルーの巨大地上絵を例に挙げるあたりはなかなか秀逸だ。
記者席は内閣のスポークスマンの予期せぬ熱弁に爆笑の渦。調子に乗った町村氏は「毎回、こういう質問をお願いします」と満足げだった。
一方、福田首相は同日夜、首相官邸で記者団に「私はまだ(UFOを)確認していません」と気のない返事。“閣内不一致”とおもしろがる声も出ている。