この、「努力は必ず報われる」という言葉は毎年の総選挙で高橋が訴えた続けた言葉である。ネタにされたり、「キレイごと」と片付けられることも多い。しかし、この言葉には、「わたくし高橋みなみは、人生をもって証明します」という続きがある。2015年の総選挙では、「努力は必ず報われるとは限らない。そんなことはわかっています。でも、私は思います。頑張っている人が報われて欲しい」と語り、「努力は必ず報われる。わたくし高橋みなみは、人生をもって証明します」と落ち着いた声でファンとともに発言した。
さらに2015年の総選挙では、メンバーへ向けて、「頑張っても評価されないなあってたくさん矛盾を感じていると思います」と前置きして、「人生っていうのはね。きっと矛盾と戦うものなんだと思います」とも。さらに、AKB48の総選挙では80位までが、ランクインとなり、名前を呼ばれるが、「呼ばれなかったメンバーは頑張っていなかったのか、違います。みんな頑張っています。でも頑張らなければ、はじまらないってことをみんなには忘れないで欲しいんです」と訴えた。
よく言われることだが、オープン当初、AKB劇場には7名しか観客がいなかった。彼女の芸能人生は、まさに「頑張らなければ、はじまらない」状況からスタートした。ただ、そんなグループが、紅白歌合戦に出場、レコード大賞受賞、結成当初からの目標であった東京ドームでの公演を行い、ドームツアーも成功さた。紆余曲折はあったものの、そんな奇跡的な大成功をおさめたグループで、“総監督”として多くのメンバーから尊敬される高橋みなみを“勝者”と見る方も多いだろう。高橋が、矛盾であると認識しつつも、「頑張っている人が報われて欲しい」との発言は、成功者からの上からの発言と感じる方も少なくないはずだ。
しかし、高橋みなみは、順風満帆な成功者なのだろうか。彼女は2015年の総選挙でのスピーチで、「(AKB48へ加入して)1年で気づきました。私はこのグループで1番になれないってことを。同期には前田敦子がいて、次の期には大島優子がいて。みんなすごくて…」とも語っている。歌手を夢見て芸能界入りを目指すような人間であれば、人一倍、「誰よりも前へ」との思いが強いはず。高橋はまだ中学生であった当時に打ち砕かれたことになる。この発言から、高橋は総監督と言われようとも、決して、自身を、AKB48での勝者とは思っていないようだ。
AKB48として、大きな成功をおさめた高橋だが、個人での願いや希望は、ある意味でなにひとつ成し遂げてはいない。AKB48であれだけ成功しても、個人としては、前田や大島に敗北した“敗者”と考えているかもしれない。「努力は必ず報われる」は、そんな敗者の発言なのである。なので、「わたくし高橋みなみは、人生をもって証明します」と続くのだ。もちろん、卒業しても彼女の芸能人生は続く。とてつもない頑固だというのが、彼女に近いメンバーの評価であるので、努力の“矛盾”と真っ向から戦い続けることになるだろう。とても不器用にも見えるが、「努力は必ず報われる」と発言し続けたことは、「これからも努力し続けたい」という自身の今後の人生の意思表示であったのではないだろうか。