「必ずしも会場だけでなく、首都東京が狙われるおそれがある。東京のシンボルである都庁がテロのターゲットになる可能性があることを、来庁者にご理解いただけていると実感している。警備員を何人増やしたかは言えない。最終目的は来庁者や職員をテロから守ること。手のうちを明かすわけにはいかない」(都総務局庁内利用管理課)
2005年の英グレンイーグルズサミットでは開催2日目、開催地から離れた首都ロンドンが狙われ、甚大な被害が発生した。洞爺湖サミット2日目の首都東京は危ぐされたテロや大騒動もなく、警備関係者らをとりあえずホッとさせた。
都庁では、出入り口を5カ所に絞り、そのすべてで手荷物検査への協力を呼びかけている。都内駅頭や繁華街での警戒警備を見慣れたせいか、非協力的だったり警備員に食ってかかる輩はきわめて少ないという。チェックに引っかかったのは、本紙が確認できただけでナイフや土産用の木刀を持ち込もうとしたわずか数人だった。
テロリストにとっては、開催地の洞爺湖よりも人の流れが激しい都市のほうが犯行を仕掛けやすい。東京で騒ぎを起こせば強いメッセージにもなる。都内の高層建造物でいの一番に狙われる危険性を指摘されているのが、地上48階建て、高さ243メートルの都庁第1庁舎ツインタワーだ。
行政サービスの性質上、入庁制限は設けておらず、無料開放する第1庁舎45階の南北展望室には外国人観光客の団体などがひっきりなしに訪れる。軍事ジャーナリストは「都庁爆破テロの危険性はまだ残っている。ツインタワー爆破は2001年の米同時テロを連想させ、格好の標的に変わりはない」。国内に外国人テロリストが潜伏中との情報も飛び交っており、米同時テロ後には、都庁が狙われる設定の小説「都庁爆破」(高嶋哲夫著、宝島社刊)が出版されたこともあった。
7〜9日まで、都庁展望室への直行エレベーターに乗るには、金属探知機のゲートをくぐらなければならない。「外国人のほうが自分からバッグを開けてくれたり、危機管理意識が強い」(警備員)という。ゲートでブザーの鳴ったミニスカートの南米系女性が、求められてもいないのに、探知バーをかざす警備員にパンチラぎりぎりまでめくってみせるシーンに出くわした。
都庁では“レベル1”として6月1日から警戒態勢を取り、7月5日からは全出入り口で手荷物検査をする“レベル2”に強化。7日から展望室への来場者を金属探知機器で調べる“レベル3”に突入している。地下駐車場への入場車両は、行先とトランク内部を確認される。
都は4月、サミットに向けて東京での爆弾テロを想定した避難訓練を実施。5月に石原慎太郎都知事(75)を本部長とするテロ警戒推進本部を設置し、都民らに向けた小冊子「テロや武力攻撃から身を守るために」を約20万部配布した。水面下では海外テロ組織の研究・情報交換も行ってきた。