ベストマイラーへの道が、再び見え始めた。3年前にはGIIのニュージーランドTを制し、一昨年はGIIIの京都金杯を勝った。マイル路線で確固たる存在感を示していたマイネルスケルツィだが、それ以降は徐々に影が薄くなっていた。
そのあたりは前走、関屋記念の13番人気という前評判にも表れていた。実績の乏しい左回り。加えて「放牧明けで仕上がり途上だったし、もともと暑さには弱いタイプですから…」と、担当の桑原調教厩務員でさえ弱気になってしまう状況だった。
ところがレースでは2番手から積極的に流れに乗ると、持ち前の粘りを発揮。スマイルジャックとヒカルオオゾラには差されたが、皐月賞馬キャプテントゥーレの猛追はクビ差しのぎ切り、3着に踏ん張った。
「正直、自信がなかっただけに、よく走ってくれたと思います。精神面で成長し、競馬がさらに上手になった。左回りもそうですが、直線の長い外回りでしっかり走れたのは収獲でした」と振り返った。古豪の意地を十分に見せつけた。
その後は京成杯AHを秋初戦に定めて、熱心に乗り込まれてきた。2日の1週前追い切りは、美浦南のポリトラック。800メートルから55秒8→39秒8→12秒3をマークした。
「テンの入りが遅かったので、ゴール板を過ぎても1角までビシッとやりました。前走は八分の仕上がりだったけど、今回は九分以上。心配な点は何もないですね」。自ら騎乗した桑原調厩員は笑みを浮かべた。
条件はすべての面で好転する。デキは良化、舞台はGII勝ちのある最も得意な中山。しかも開幕週で、馬場状態は先行馬に圧倒的に有利だ。外差しが決まる馬場だった関屋記念当時の新潟とはまるで違う。
「初騎乗だった乗り役(石橋脩騎手)とは相性がいいようだし、何より前走で手の内に入れてくれたでしょう。変に脚をためず、早めに動いて押し切る競馬をすれば、チャンスは十分ある」
マイルCSに胸を張って挑むためにも、ここは勝って賞金加算が条件。遠のきかけたGIの夢に再び挑む。