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話題の1冊 著者インタビュー 池上正樹 『大人のひきこもり 本当は「外に出る理由」を探している人たち』 講談社現代新書 800円(本体価格)

 −−同じ「ひきこもり」をテーマにした前著の刊行から4年が経過しています。その間、ひきこもりを取り巻く状況に変化はありましたか?

 池上 これまで「ひきこもり」といえば、学生時代の不登校の延長や就職活動などの過程で正社員に就くことができないまま社会から脱落した、ダメな“若者”の代名詞のように語られてきました。しかし、近年は「ひきこもり」の裾野がじわじわと広がり、今もずっと増え続けている、というのが実感です。

 −−今回の『大人のひきこもり』では、山形県や島根県、東京都町田市などの調査を基に試算したところ、実は40代以上のひきこもる人たちは予備軍も含めると全国に100万人いると指摘していて、非常に驚きました。

 池上 ひきこもる人たちの高齢化が進んでいるのです。最近はブラック企業で傷付けられたり、リストラや病気、老親の介護などを理由に都会の勤務先を退職した後、生まれ故郷に帰っても再び就職できない“失業系ひきこもり”と呼ばれる高年齢者層の存在が目立ってきています。1年間に300社応募し続けているのになかなか再就職できない40代男性のケースをはじめ、アベノミクス景気をまるで実感できない深刻な実態を本書では伝えています。

 −−その他にも、息子の就活失敗を機に将来が不安になり、外出することができず買い物にも行けなくなってしまった50代主婦の例にも触れています。

 池上 もはや「ひきこもり」は決して他人ごとではいられない、誰にでも起こりえる身近な現象ともいえます。その一方で、家族にしてみれば、ひきこもる当事者の存在を「家の恥」と考え、友人や親戚、近所にもSOSの声を上げることがしづらく、誰にも相談することができないという状況があります。その結果、地域の中でその家族がまるごと埋もれてひきこもってしまう…。そんな家族が煮詰まると、心中や殺傷事件などの悲劇につながることもありますので、今やひきこもりは日本に潜む大問題であるともいえるのです。

 −−どうすれば解決につながるのでしょうか。

 池上 これから必要なのは、ひきこもる人たちが自主的に動き出すための入り口となる「居場所」作りと、一緒に考えながら走り続ける「伴走」のような関わり方だと思っています。本書を読んでいただくことで、ひきこもりの問題を「他人ごと」としてではなく、「自分ごと」として捉えていただくことが、解決へとつながる第一歩になると信じています。
(聞き手:和宮陽一)

池上正樹(いけがみ まさき)
1962年、神奈川県生まれ。大学卒業後、通信社勤務を経てフリーのジャーナリストに。主な著書に『ドキュメントひきこもり』(宝島社新書)など多数。

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