辻発彦新監督は守備の強化を掲げており、クローズアップされたのがショートのポジションだった。昨季後半、呉念庭が頭角を現し、ショートで42試合出場している。右投左打で俊足、身体能力の高さも感じさせる呉に託すのかと思われたが、そうではないらしい。鬼崎裕司、永江恭平、ドラフト3位の源田壮亮(23=トヨタ自動車)を競わせる図式になっていた。4人とも、決して守備はヘタではない。ただ、昨季の西武は2アウトでのエラーが多かった。ボテボテの内野ゴロ、「3アウトチェンジでベンチに帰れる」と思った瞬間、一塁に悪送球…。投手に与えるダメージは大きく、失点につながる悪循環が続いた。それは全野手に責任があることだが、辻監督がショートに着目したのは、内野陣営を牽引するような存在が欲しかったのだろう。
辻監督、馬場俊史内野守備走塁コーチが付きっ切りになることも多いのが、新人の源田。「正遊撃手」をこの源田に託すとしたら、問題はバッティングだ。
2月13日、新外国人左腕のガルセスがフリー打撃に登板した。源田とも対戦しているが、“大人と子ども”状態。ガルセスは140キロ台後半が最速だという。少しボールが動いているのだろうか。同日のフリー打撃では、ストレートに外国人特有の揺れによって、レギュラークラスの金子侑司も苦戦していた。しかし、源田は勢いのないゴロやファールボールを重ねるだけで、これから対戦するプロ投手の速球、変化球のキレに苦労しそう。「打撃は今後」だろう。4人の正遊撃手候補のなかで、守備範囲の広さを見せていたのは、源田だ。呉を引っ込めるのはもったいない気もするが…。辻監督が「堅守、機動力」の黄金期の西武スタイルを復活させるとすれば、昨季、金子を外野にコンバート転向させて盗塁王(16年)に導いたように、今までと違う呉の使い方も考えているはずだ。
投手陣だが、田村伊知郎(22=立教大)も計算に入っているのではないだろうか。2月10日、実戦形式のシート打撃に登板し、打者10人をパーフェクトに押さえ込んだ。特筆すべきは、主力の秋山翔吾との対戦。本人も雄叫びを上げるが、空振り三振を奪った内角低めのストレートは「超」の付く一級品だった。
新加入右腕のキャンデラリオは素人目にも分かるムービングボールを投げていた。150キロ強が出るという。前評判通りなら、キャンプ中盤時点での球速は「60%」といったところだった。また、シュートなのか、シンカーなのか分からないが、右打者の膝元に変化球も投げていた。「沈む軌道」なのでシンカーなのだろうが、曲がり幅が大きい。フリー打撃で対戦した右打者の木村文紀は捕手と軌道を確認する仕草も見せており(13日)、左打者の秋山もバットの先でしか捉えられなかった。ブルペンではスライダーも投げていたので、内外角への出し入れのできるタイプでもあるようだ。
先のガルセスは、基本はスリークオーターだが、時々、サイドスローでも投げていた。関係者によれば、本番も投げ分けるとのことだ。3年目の高橋光成(16年4勝)がブルペンで存在感を見せていた。この高橋と2年目の多和田真三郎(16年7勝)で20勝以上を稼いでくれたら、西武は確実に優勝戦線に帰ってくるのだが…。