「侍ジャパンの代表監督復帰も伝えられていましたが、こちらは叶いませんでした。11月にはペルーに出向き、国際協力機構による現地日系人らの子どもたちを対象とした野球教室の指導役も務めています。上り調子にあるDeNAの次期監督就任説も囁かれていますが、その信憑性はともかく、候補に名前が出るということは、原氏の知名度、影響力が再認識されているからでしょう」(ベテラン記者)
それを古巣巨人が放っておくはずがない。今オフのチーム再編は、原帰還に備えたものとも言えそうだ。
「世代交代」が明確になったのは、“元エース”内海哲也(35)の契約更改が交わされたときだった。
「同日、菅野智之(28)の契約更改も行われました。投手タイトル二冠、沢村賞も受賞した現エースと同日に更改したことで、まさに天国と地獄、明暗が分かれました」(スポーツ紙記者)
今季の菅野はWBCでもエースとして活躍。シーズンでも17勝5敗、防御率1.59はともにキャリアハイ。その両部門でタイトルを獲得し、更改された年俸4億5000万円(推定)は、チームトップである(12月14日時点)。
対する内海は今季2勝7敗で、2億円から50%ダウンの1億円での更改となった。2年前は4億円だった年俸が4分の1に激減。この世代交代の契約更改を指して、こんな声も聞かれた。
「1月の自主トレグループの編成にも影響しそう。内海を中心としたグループに入っていた笠原将生(契約解除)、小山雄輝(現楽天)、平良拳太郎(現DeNA)らは、もういません。内海グループと菅野グループを掛け持ちしていた宮國椋丞は、今回から菅野グループに専念します。おそらく他投手も菅野のもとに集まるはず」(前出・ベテラン記者)
こうした流れを、むしろ内海も「いつまでも自分が表立っているようでは…」と、菅野グループの拡大を歓迎しているという。元エースの後押しも得られたとなれば、名実ともに菅野時代の到来というわけだ。
「菅野がチームの顔となれば、伯父の原氏はますます帰還しやすくなります」(関係者)
原氏といえば、菅野の母校でもある東海大グループに、今も絶大な影響力を持つ。元東海大野球部監督の父・貢氏はすでに亡い。しかし、その門下生や学校関係者は故人のことを「監督さん」、原氏のことを「辰徳さん」と呼び分けて、気を遣っている。その東海大グループ傘下にあった選手が、今秋のドラフトで巨人から複数指名されていた。
3位・大城卓三(捕手・24歳・NTT西日本)
育成枠・広畑塁(捕手・22歳・立正大)
ほかに、巨人は2位の岸田行倫、育成枠の小山翔平と、合わせて4人もの捕手を指名し、他球団も首を傾げていた。今季138試合に出場した小林誠司(28)と、成長株の宇佐見真吾(24)もいるのに、だ。
「一般論として、1回のドラフトで捕手を2人以上指名することはしません。高校生と大学生のように年齢が離れているならともかく、実戦経験が大事なポジションなので、年齢の近い捕手ばかりだと機会が限られ育ちにくいんです」(同)
大城は東海大学の出身。大学在学中に首位打者のタイトルを獲得しているが、一塁手でも試合に出ており、打撃力を買われての指名だろう。育成枠の広畑も東海大五高(現東海大福岡)の出身だ。ポジション重複の偏重ドラフトを行ったのは、「4年連続で優勝を逃す」汚名を着せられたくないからだろうか。長い巨人の歴史の中で、4年以上優勝から遠ざかったことは一度もない。まして、高橋由伸監督(42)は今季、13連敗のワースト記録を更新した。
「来季も勝てないとなれば、高橋監督の進退を本気で考えなければなりません。勝てる監督候補が見当たらないとなると、優勝経験を持つ原氏を再々登板させる人事案も有力となります。高橋監督も、前任者に戻すとなれば、2度目の登板の可能性が生まれます。巨人は生え抜きしか監督になれないのではなく、エースか4番経験者のOBからしか監督を選びません。高橋監督がコケたら、斎藤雅樹一軍投手総合コーチしかいない。連覇しての交代ならともかく、負けて、未経験者の登用となると…。まだ斎藤で冒険はできませんよ」(同)
東海大グループの勢力拡大は、「原帰還」の布石とも捉えられる。当の原氏はノンビリしたいような口ぶりでユニホームを脱いだが、退屈していたのだろう。先のペルーでの野球教室では精力的に動き、人一倍声を張り上げていたそうだ。
「広島、DeNAは生え抜きの野手が育ち、阪神も遅まきながらその方向で結果が出始めています。坂本勇人、長野久義らは原監督時代にレギュラーに定着した選手です。一応、原氏は若手育成の結果を出しているので、有力候補に挙げられるのは当然」(前出・ベテラン記者)
原氏の存在が大きくなっていけば、困るのはヨシノブ派の一部コーチと鹿取義隆GM。原氏の院政が待ったなし、となっている。