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育成の広島が『即戦力投手』補強に徹したウラ事情

 「広島は変わったね」−−。去る10月28日、プロ野球ドラフト会議が行われた。他球団を驚かせたのは、野村広島が即戦力投手の補強を最優先させたこと。『育成の広島』が10代の選手をたった2人しか指名しなかったのだ。(育成枠を除く)

 「監督が野村(謙二郎=44)になったからだろうね。球団も彼に期待しているので、こういう強気の指名に出たんだと思う」(在京球団スカウトの1人)
 広島は早大の豪腕・大石達也投手の競合抽選に参加した。アマ最速の沢村拓一投手(22=中央大)が巨人と相思相愛にあることが発覚し、注目の斎藤佑樹投手(=早大)は「実戦での修正・適応能力はピカイチ」と言われてきたが、「クローザータイプの大石が、もっともプロ向き」と評する声もあり、大石に1位指名が集中することは、各球団も予想していた。前出の在京球団スカウトがこう続ける。
 「大石クンには6球団が集中しましたが、『少なければ、4球団』と予想する声もありました。西武と広島は競合・抽選を避け、堅実に即戦力投手を獲るのではないか、と」
 左腕投手を欲するチーム事情から、西武は阪神外れ1位の榎田大樹(24=大阪ガス)を一本釣りしてくるのではないかとも目されていた。

 「いつもの広島なら、確実に一本釣りできる選手を指名してきたはずです。今年は即戦力投手が多く、抽選に外れても、ローテーション投手は確実に指名できましたが、1位指名が社会人・大学生になると、契約金は上限いっぱいまで出す覚悟も必要なんです。広島が高校生の指名を優先してきたのは、経営的な理由もあったと思いますよ」(前出・同)
 リスクを冒してまで、ビッグネームを獲りに行く…。確かに、今までの広島には見られなかったドラフト戦略である。だが、強気な野村監督らしい1位入札でもあった。
 広島に欠けているのはマエケンこと前田健太投手(22)に次ぐ“即戦力投手”であり、それがビッグネームともなれば、観客動員数のアップにもつながるだろう。もちろん、広島が20代の即戦力を1位指名した前例はある。高校生を多く指名してきたのは自軍の育成に自信があるからだろうが、「時の運より、堅実性」と競合・抽選を嫌ってきた。
 今回のドラフトで、野村監督を始めとする首脳陣の「ビッグネームの即戦力投手が欲しい」とする要望が通ったのは、「地元財界の期待」とも言われている。
「昨夏、広島の球団幹部が野村に監督就任の打診をしたら、『コーチ経験もないので』と断ってきたんです。一時は他コーチの内部昇格で決まりかけたんですが、地元財界が難色を示し、野村も断れなくなりました」(地元関係者)
 地元財界は広島戦(主にマツダスタジアム)のチケットを定期購入している。たとえば、大手家電量販店が消費者への景品としてカープ戦のペアチケットを使うなど、これまで以上に球団を応援してきた。その期待に応えるにはやはり「勝つ」しかなく、監督2年目となる来季は、最低でもクライマックスシリーズ進出を果たさなければならない。
「カープがドラフト指名した7人のうち6人が投手でした。いや、それ以上に驚いたのは10代の選手は7人中2人しかいませんでした。育成のカープが即戦力を優先したドラフト補強を出たのは、本当に驚きました」(前出・在京球団スカウト)
 現場、フロントが一丸となって野村体制を支えようとしている…。
しかし、シーズン前、野村監督が「欲しい!」と言って強行に獲得したJ・ヒューバー(28)が不振に終わっている。選手補強に口を挟みすぎると、ペナントレース敗退後の責任を全て背負わされる可能性も出てくる。

 「広島スカウトの動きを見る限り、『社会人・大学』から、捕手も獲得したかったようですね。高校生捕手の磯村嘉孝(17=中京大中京)を下位指名しましたが、即戦力ではありません。今季122試合に出た石原(慶幸=31)がFA権の行使をちらつかせています。石原との残留交渉が決裂したら、他球団から獲るつもりなのか? 社会人、大卒の捕手を獲らなかった時点で、『広島がFA市場に参入する可能性がある』と見たライバル球団も少なくありません。ロッテ・里崎、楽天・藤井、西武・細川など、今年はFA権を持った好捕手が多いですからね」(前出・同)
 FA市場では自軍選手を見送るだけだった広島が、ついに獲る側に転じるのか…。
 選手編成や補強に意見を言うのは、野村監督の責任感の強さからだろう。『外れ1位』の福井優也(22=早大)、2位・中村恭平(22=富士大)、3位・岩見優輝(23=大阪ガス)の3投手は他球団も高く評価していた逸材だ。「即戦力捕手の獲得」を諦め、投手の補強に偏重したのも、野村監督の意向だと言われている。育成対象の選手補強枠を縮小させてまで、即戦力投手の指名を優先した今回のドラフトは、野村監督の“決意表明”でもあるようだ。

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