その中でも最近、大きな注目を集めているのは、パナソニックだ。
「昨年秋に子会社化した、住宅事業部門のパナソニックホームズ(旧パナホーム)が中心となって民泊事業を進める。施設内の設備や家電はすべてパナソニックと、本体の電気部門にもプラスになるように計画されています」(ビジネス誌記者)
パナソニックホームズは、これまでも投資家らの土地に介護施設などを建設して貸し出す転貸運営の実績が約100件あり、この事業モデルを民泊にも広げる計画だという。具体的にはまず、東京と大阪の中心地で施設を10棟程度建設して、土地所有者から借り上げる。運用は提携する民泊運営会社のスクイーズなどに任せ、1人当たり1泊5000円程度での貸し出しを見込んでいる。
またパナソニックでは昨年暮れから民泊元年を見越し、JR大阪駅北側の複合商業施設「グランフロント大阪」内のショールーム「パナソニックセンター大阪」に古民家再現住宅を展示するなど、PRと準備に力を入れてきた。
「和風仕様のシステムキッチンや畳の部屋など、やはり外国人観光客の受けを狙ったものを多く展示しており、多くの見学客で賑わっている」(建築雑誌編集者)
パナソニックホームズは、こうした民泊事業で今年度に強気の売上高50億円を目指し、関心のある土地所有者などへの売り込みに躍起だ。
民泊に参入する異業種は、他にもある。阪急阪神HD傘下の阪急不動産は、昨年9月から阪急電鉄、阪神電気鉄道の沿線にある空き家を民泊に活用する支援を開始。パナソニックとも提携する民泊仲介サービス業社の「百戦錬磨」と連携し、リフォームや民泊の認定手続きに関する家主からの相談に乗る。
「阪急阪神HDは、一昨年あたりから空き家対策の事業を模索してきた。それが今、民泊事業として実りつつあるのです」(経営コンサルタント)
大手航空会社もインバウンド客を地方路線などで取り込んでいくことを狙い、民泊サイトとの提携を積極的に進めている。
「日本航空(JAL)は今年2月、民泊仲介サービスと資本・業務提携した。リゾート地は民泊モデル事業として有望ではあるが、施設自体が不足している。そこで鹿児島県奄美市などの自治体と連携し、エコツーリズムとして展開するという。さらに仲介サービス業者が開発、提供する民泊パック商品の開発などとも連携するといいます」(航空会社関係者)
これに負けじと動き出したのは、全日本空輸(ANA)。これに子会社のLCC(格安航空会社)のピーチ・アビエーションも加わり、民泊で世界的に実績のあるアメリカのAirbnb(以下、エアビー)と業務提携した。
「エアビーとANAは、すでに共同で特設サイトを公開。そのサイトでは例えば、古民家や農家民泊、キャンプといったテーマを設けて、宿泊先を紹介している。そこを経由してエアビーで宿泊予約をすれば、マイレージクラブ会員には最大200マイル、さらに1人3000円分のエアビークーポンも配布されます」(同)
また、コンビニ業界も民泊に一枚噛む。セブン-イレブン・ジャパン、ローソン、ファミリーマートは民泊施設の鍵の受け渡し業務を始めている。
「セブン-イレブンはJTB、ローソンはキーカフェ・ジャパン、ファミリーマートはエアビーと提携している。利用者が鍵を取りにくるのと返却の際を合わせれば、最低2回の来店が見込めることになりますからね。収益の確実性が高い参入方法です」(前出・経営コンサルタント)
さらに保険業界でも、あいおいニッセイ同和損害保険は民泊事業者向けの新商品の販売を始めた。民泊施設の物損補償、差別的行為やプライバシー侵害、精神的苦痛を理由に事業者が宿泊者や近隣住民から訴えられ裁判で賠償を命じられた場合、支払いを補償するのが特徴だ。
「三井住友海上火災保険は、宿泊者同士のトラブルも保険対象。ほか、損保ジャパン日本興亜は、エアビーを利用した宿泊者から24時間相談を受け付けるサービスを提供し、鍵をなくしたなどのトラブルの相談にも乗ります」(保険会社関係者)
民泊新法は、違法民泊がサイトからの削除を観光庁から求められ予約が宙に浮くなど大混乱のスタートを見せている。そうした中、先を見越した異業種の参入は、功を奏するのか。