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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 最低対最悪の戦い

 アメリカ大統領選挙は、9月26日(日本時間27日午前)に第1回のテレビ討論が行われるなど、11月の投票に向けて最終段階を迎えた。いまのところ、民主党のクリントン候補が共和党のトランプ候補を支持率で上回っているが、僅差だから、今後、何が起きるか分からない。ただ、私の目には、「最低」対「最悪」の戦いに映る。

 クリントン氏は最低だ。彼女の政治資金は、富豪であるトランプ氏の32倍に及んでいる。それが、善意の寄付ならよいのだが、クリントン氏には、カネに関する黒い噂がつきまとっている。
 例えば、ニューヨーク・タイムズの報道によると、'13年にロシアの原子力企業ロスアトムが米国のウラン生産会社を買収しようとした。ロシアにウランを押さえられるのは、米国の安全保障上大きな問題だったが、ヒラリー・クリントン国務長官は、買収を承認した。ところが、'09年から'13年にかけて、クリントン財団は、そのウラン生産会社の会長から合計235万ドルの寄付を受けていたことが発覚したのだ。
 その他にもクリントン財団は、慈善団体であるにもかかわらず、軍需産業やハゲタカ投資銀行から多額の寄付を受け取るなど、経済界との癒着が報じられている。とんでもない金権政治家なのだ。

 一方のトランプ氏は、最悪の候補者だ。昨年暮れに「我が国が実情を把握できるまで、包括的で完全なイスラム教徒の米国入国禁止を要求する」と言うなど、差別的な発言を繰り返し、メキシコ国境には不法移民を防止する壁を作ると宣言した。
 対日関係でも、米国が日本を守らないといけないのに、日本がアメリカを守らないのは不公平だとして、日本に対して米軍による安全保障の対価をより多く支払うよう要求している。また、日本の輸出が米国の雇用を奪っているとして、安倍政権の円安政策を非難し、さらにはTPPも米国の雇用を奪うとして、完全否定しているのだ。

 日本政府は、最悪のトランプよりも、最低のクリントン大統領を望んでおり、安倍総理は、9月20日に、トランプを無視して、クリントン候補だけと会談している。
 実は、その席でクリントン氏も、TPPには反対する立場を表明したのだが、クリントン氏はTPPで条件闘争を仕掛けているだけで、トランプ氏のようにちゃぶ台をひっくり返すような真似はしないとみられている。

 ただ、私は最終的にトランプ氏が大統領に就任する気がしてならない。この5年ほど、大きな選挙で、必ず私の嫌いな候補者が勝っているからだ。
 万が一、トランプ氏が勝ったらどうなるか。実はマーケットでは、すでに「トランプショック」という言葉が使われている。日本の金融緩和をトランプ大統領が認めないために、急激な円高と株価の暴落を招くだろうというのだ。
 そして、トランプ大統領誕生にともなうもう一つの大きな変化が、日本の安全保障の再構築だ。日本は、いまよりも大きなカネを支払ってアメリカに守ってもらうか、自主防衛力を強化するのか、選択を迫られることになる。どちらにしても、日本の国民負担が増えることは間違いない。悪夢は着々と近づいている。

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