大地震によるデマその3「デマは心の闇が浮き彫りになる」

社会 2011年03月29日 11時45分

 震災のような災害が起こると、必ずといって出てくるデマ。

 大正12年に起こった関東大震災のときは、「朝鮮人が井戸に毒を入れ、暴徒化している」とか「朝鮮人が略奪、強姦、放火をしている」というデマがあらわれた。
 もちろんこれは事実ではなかったのだが、皮肉なことにその出どころがデマをおさえる側の警察であり、そのデマを鵜呑みにしてしまった新聞記者が記事にしたため、一気に広がってしまったというものだ。
 結果、正確な人数はわからないが数百人から数千人の朝鮮人、そして朝鮮人と間違われた中国人、言葉がうまく喋れない聾唖者、あるいは方言のある地方出身者が、暴徒から人々を守るはずの「自警団」から虐殺されてしまうという悲劇を生んだ。

 大震災における朝鮮人虐殺は、普段は隠されている民族差別という“闇”を浮き彫りにさせるカタチとなった。これは、決して現在も消えたわけではない。
 平成7年に起こった阪神淡路大震災のときも、関東大震災のときとまったく同じ「朝鮮人が略奪、強姦、放火をしている」というデマが走った。
 そして今回の大地震のときも、やはりまったく同じデマが出てきたのである。大正時代の関東大震災との違いは、このデマを真に受けて外国人を大量殺害するような人々が出なかったということだ。日本人の民度がそれだけ高くなっていると思いたい。

 また、関東大震災や阪神淡路大震災のときとの違いは、いまこの原稿を書いている3月22日現在において、被害が大きかった宮城や福島といったところではなく、ほとんど被害のない東京などで、ツイッター等のネットから発信されたことであろう。
 困ったことに、このデマがツイッター等において【拡散希望】という名目でリツイートされ、それを読んだ、あまり物事を疑わない人たちが信じ込み、デマの拡散を手伝ってしまったことだ。
 そしてこれらリツイートした人々の中には【善意】から、こういったデマを広げてしまった人がたくさんいるのだ。
 しかもこのことについて、誰かが注意をした場合、「万が一本当にあったらどうするんだ!? 用心するに越したことはない!」という感情的な言葉が帰ってきて、人間関係までこじれてくることがある。

 これは何も犯罪についてだけではない。
 今回の地震は、原子力発電所が壊れ放射線という目に見えないモノが漏れ出すという事故も、同時に起こっている。
 当初は、福島原発と千葉の製油所火災がゴッチャになり、
 「千葉の製油所から出ている煙に猛毒の化学物質が入ってます。これから猛毒の雨が降るから、外出のときは傘とレインコートを着用してください!」
 というチェーンメールが飛び交った。
 放射線に関しては、この時点ではあまり問題なく、また、よくわからなかったこともあり「猛毒の化学物質」という表現になったのであろう。

 これもどのような人が、チェーンメールを回したかというと、“善意の人”である。
 やがて人々の注目が原発に向かうと、放射線を恐れるあまり外出する人が少なくなってきた。
 また、地震の被害を受けていない東京をはじめとする関東の人々が、関西や九州などに避難していった。
 中には、東京や関東を離れていった人を悪く言う人もいるが、政府・行政がまだ何も言っていないこの時期に避難するかしないかは、その人の思いや考え方次第なので、他者が文句を言う筋合いはない。

 というのも、平常時においてならデマの裏を取ったりすることもできるが、緊急時において裏を取ったり確かめたりする時間がなく、反射的に動いた人が助かるという例もたくさんあるのだ。
 例えば今回の大津波だが、「津波が来る!」という情報についてデマかそうでないかを確認しているうちに、逃げ遅れてしまった人もたくさんいると思われるのだ。
 この場合、「津波が来る!」という情報を信じて、取る物も取らずに逃げ出した人が生き残ったわけである。

 よって情報については、次のことがいえる。
 平常時においては、政府や専門家、企業から出る情報を鵜呑みにするのではなく、いつも監視し疑っておくべきであろう。
 そして非常時・緊急時においては、政府や企業、専門家の言うことを疑ってはならない。何かが起こってから疑っていると、逃げ遅れてしまったり手遅れになってしまうからである。
 ただ、今回は残念なことに、政府も原発を扱う企業も、過去に隠蔽(いんぺい)やゴマカシをやり続けてきたキャリアがあり、市民は政府も原発も信用などしていないし、いまさら(信用など)できないという状況になってしまっている。
 第二次大戦のときの「大本営発表」を鵜呑みにする人があまりいなかったがごとくである。

 これからも被災地では、いろいろなデマが飛び交うことであろう。
 原発のあった周辺では、農作物が売れなくなってしまったり、あるいはその土地に住んでいた人に対して「放射能汚染がうつる」といった根も葉もない噂が出たり、子どもたちの間ではいじめもおこるかもしれない。
 そういった不幸なデマが飛び交ったとしたら、ちゃんと情報を整理して、これ以上の不幸を積み重ねないようにしなくてはならない。
 デマは心の闇や不安を写すものであるからこそ、闇をうまくコントロールしていかなくてはならないのだ。

(巨椋修(おぐらおさむ) 山口敏太郎事務所)

参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou/

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