中でも、足の指関節を中心に腫れや炎症で痛みを発症させる「痛風」は、ビール自体が犯人と思い込んでいる人が多く、ビールを飲むことを避けようとする風潮さえある。しかし、医療関係者は言うのだ。
「確かにビールにはプリン体という痛風を誘発する物質がありますが、それが痛風の発作を引き起こす“真犯人”みたいに決めつけるのは誤解と言っても過言ではないでしょう」
大学の研究グループなどによれば、むしろビールは健康を促進する働きが沢山あり、動脈硬化などを予防するといった研究結果がいくつも報告されている。
その一つ、ギリシャのハロコピオ大学の研究チームは、20代後半から30代前半の非喫煙者17名を対象に実験を行った。彼らには400ml(中ジョッキー1杯)のビールを飲んでもらい、2時間後に心臓や血管といった循環器系に、どのような影響があるかを調べた。
その結果、被験者たちのいずれも血流が良くなり、動脈の硬さもなくなり、柔軟になっていることがわかった。ノンアルコールビールやウオッカでも実験したが、動脈の硬さに関しては、どちらも一定の効果がみられたが、ビールほどの効果がないことが判明したという。つまり、ビールは動脈硬化によって引き起こされる心筋梗塞や脳卒中などの予防に繋るというわけだ。
また、北海道大学院保健科研究院の研究でも、ビールの原料であるホップに含まれる「キサントフモール」に、動脈硬化を予防する効果があるという研究報告も出されている。
しかし、動脈硬化の予防効果や健康促進の働きがあることは理解できたとしても、肝心の酷い痛みの発作が襲う「痛風」という病気とビールの関係はどうか。「ビールに対する誤解」を解くためにも、ここは説明が必要になる。
総合医療クリニックを営む医学博士・久富茂樹院長に聞いてみた。
「確かにビールはプリン体が多く、尿酸値を上げるため痛風の天敵と言われています。他のお酒に比べても、プリン体が一番多く含まれていますが、実際の含有量を調べると、ビール1ミリリットル程当たりのプリン体はごはん1杯分程度。ビール500ミリリットル程度までなら、痛風患者が飲んでも問題ありません。むしろステーキやレバー、エビ、納豆などの他の食品の方が遥かに多く、これらに比べても、数10分の1と、含有量は少ない。そんなに気にする必要はありません」
むしろ、ビールには利尿効果があるし、“適量”でさえあれば尿酸値を下げる効果も期待できると、久富院長は語る。しかし一方で、痛風の発症が必ずしも尿酸値の高い低いで決定付けられると一概に言えない説もある。
そこで、「痛風」の発症メカニズムについて、もう少し詳しく触れておこう。