「清宮は下半身を使い切れていません。金属バットの高反発力と、上半身の力だけで飛ばしているような打ち方です。『高校よりも上のレベル』で野球をやりたいのなら、今のままではダメ」(ベテラン記者)
プロのスカウトも分かっている。清原和博、松井秀喜の高校時代と比べれば、清宮はワンランク下だ。
「和泉実・早実監督の手腕にも掛かっています。加藤を1年から使い、3年最後の夏は主将を任せたように、きちんと育成できる指導者。同校は、過剰なマスコミ取材への対応も斎藤佑樹(現日本ハム)で免疫があり、しっかりしている」(同)
しかし、その斎藤は高校、大学で“自分の世界”を作ってしまった。プロ入り後は右肩故障に苦しんだが、その予兆は高校時代からあった。軸足を少し折って、ヘンな間を作る投げ方に勝手に改造し、「その投げ方では肩を壊す」と周囲が諫めても聞く耳を持たなかった。
スポーツライターの飯山満氏が言う。
「石川、清宮ともに努力家なのは間違いありません。だから、スランプにハマった際、いつも通り練習をしているから抜け出すきっかけが掴めないんですね。あげく結果を求めるあまり、自分の本来の打ち方を見失い、そのまま駄目になってしまうパターンです。近年は天才の育て方が変わってきていて、高校指導者は、早熟の天才を良い意味で“過保護”にします。昔は『壁』にぶつかってもがき、そこから脱出したときに真の強さを得るという考えでしたが、今は『壁』を排除して長所だけを伸ばしていく指導法なんです」
高校卒業後を見越して、大学、プロで困らないだけの基礎体力と基本を習得させ、その後のことは進路先の指導者に託すというやり方だ。
しかし、この“過保護育成”ゆえに「過度のプレッシャーに対応できない」との厳しい意見もある。
「こうした“過保護世代”の天才1年生の直近例としては、PL学園出身の勧野甲輝(23=ソフトバンク育成)がいます。勧野は“清原を抜く逸材”として注目され、1年夏に四番デビューしましたが、怪我もあって2年夏にはベンチ入りさえできなかった。その後、高校では打棒が復活せず、才能だけで楽天イーグルスに指名されたが、'13年に解雇。同年、ホークスに拾われ、いまもファーム暮らしを続けています」(同)
清宮が、勧野や石川の二の舞にならぬことを祈るばかりだ。