亡命した北朝鮮元工作員のこんな証言を掲載したのは、3月20日付の『朝鮮日報』。なんと国連制裁決議に反発する同国は、その裏で覚せい剤の大々的な密売を展開していたというのだ。
ちなみに、覚せい剤は同国最大の外貨獲得商品で、「咸鏡北道山岳部には国営のケシの栽培所があり、清津の製薬工場などで精製して輸出していた」(日本の公安関係者)といわれるほど。ただ、'00年前後に合成麻薬62万錠(約7億3000万円分)ものコカイン所持事件が発生し、ロシア、ブルガリアなどの大使館員らが逮捕されてからは、一時鳴りを潜めていたのだ。
それが今回、大々的な密売に踏み切った裏には、「制裁決議で外貨獲得が困難になったため」との見方が渦巻いているが、そこには我が国も多大な影響を及ぼしているのである。前出の公安関係者がこう明かす。
「実は北の麻薬の最大の市場は日本で、過去には年間50万トン前後が流入していたのです。ところが'01年に不審船の摘発が相次ぎ、'06年のミサイル発射で海上保安庁の警戒が厳しくなった。挙げ句に尖閣問題で、巡視艇が密売海域を航行し、日本への密売が絶望視され始めたのです。そのため北は補てんを中国、東欧、ロシアへの販売に求めた。制裁決議がこのダメ押しになったというわけです」
要は、日本への密輸事情が極度に悪化したために、東欧諸国への麻薬密売に檄を飛ばし始めたというわけなのだ。前出の公安関係者がこう続ける。
「北朝鮮は、現在、麻薬の他にも世界一精巧な偽札『スーパーノート』のすり替えを海外で加速させているという。外貨獲得は最大の命題で、背に腹はかえられない状況なのです」
“悪の枢軸”の動きが闇社会でも活発化してきた−−。