「厳密に言うと、阪神とは内々に直接交渉をしています。中島裕之など目玉選手の獲得に失敗し、シビレを切らした中村勝広GMが金子の代理人にゴリ押ししたんです」(チーム関係者)
阪神の誠意が伝わらなかった理由は代理人にあったようだ。阪神は提示した条件を途中で上方修正している。その内容が関西系のメディアに露呈。秘密主義の代理人が憤り、阪神に抗議電話を入れる一幕があったそうだ。
「金子獲得に動いた阪神、中日、ソフトバンク、DeNA。代理人が各球団の条件を聞き、上位2、3チームとだけ交渉するという段取りになっていました。『オーナーの経営方針も聞きたい』と代理人が注文を出し、各球団はア然とさせられました」(球界関係者)
一部メディアも報じているが、巨人の白石興二郎オーナーが仕事納めの際に、金子争奪戦へ参戦していたことを打ち明けている。しかし、巨人は杉内、内海以上の条件は出せないとし、代理人のランキング表ではワーストだったようだ。杉内は5億円、内海は4億円(ともに推定)。現時点で日本球界のエースとも言える成績を残した金子が3億円台で獲れるはずがなく、最初から本気で獲る意志がなかったとも解釈できる。
「金子は巨人ファンで、高橋由伸が憧れの選手だったことを公言してきました。国内移籍する場合の金子の本命は巨人。その巨人が獲得意思を示さなかったことで、金子も混乱してしまったのでは」(在阪メディア)
金子は周囲を振り回しているときに、マエケンは計算が狂ってしまっていたようである。ポスティングシステムによる米挑戦を目指し、MLB公式サイトも『注目FA選手のランキング』の5位に前田の名前を挙げていた。サイトでは<エースではないかもしれないが、先発ローテーションの一角として確実に戦力になる>と評されていた。しかし、前田のもとには悲観的な情報が届いていた。
「第2回WBCでも好投した韓国の左腕、キム・グァンヒョンがパドレスと交渉するも、破談に終わりました。田中将大が故障で途中リタイアしたため、海外リーグの成績、特に投手の成績に対する信頼度はガタ落ちになっている。前田の応札金が上限額の2000万ドルに到達しない可能性が伝えられていました」(在米記者)
前田も広島カープの一員として、黒田博樹(39)の帰還は早い時期から知らされていた。メジャーで成功した黒田の帰国を惜しむアメリカのファンは多く、マエケンが黒田と入れ替わりで海を渡ることになれば、カープの新旧エースとして比較されることになる。マエケンにはそのことに対しても強い抵抗感があったという。黒田の余韻が残っているうちの米挑戦は得策ではない、と考えたようだ。
「両投手の残留で、オリックスと広島がリーグ優勝候補の筆頭になりました。でも、金子のほうは厳しい視線に晒されるかもしれません。かつて、中村ノリが近鉄からFA宣言した際、これまでに経験したことのない注目を浴び、怖じ気づいてしまいました。今回の金子の言動にも同じものを感じます」(プロ野球解説者)
金子にはナーバスな一面がある。これまで以上にファンとメディアの衆目に晒されることになるはずで、今季同様の結果が残せるかどうかは分からない。
マエケンも、メジャーで5年連続二桁勝利の黒田と肩を並べて投げねばならない。エースの重圧が相当かかるに違いない。
はたして、チーム残留という選択肢は、金子とマエケンとって最良だったのだろうか。