これは、医療関係者からよく聞く言葉。そこで、もう一度“食の改善”について触れてみよう。元新潟大病院で栄養管理士を務めていた料理研究家・渡部泰子さんは、糖尿病を防ぎ、改善する食生活についてこう提言する。
「患者さんの中には『血糖値が上がるから』といって好きなご飯、好物の甘いものを我慢する人がいます。深刻な症状の場合は別ですが、腎臓や血圧などにさほど問題がなければ、適正量のエネルギーとたんぱく質を摂るのは大事です。ご飯などの主食を摂らないと、エネルギー不足に陥ります。たんぱく質はアンモニア、尿素に分解され排出されますが、過剰に摂りすぎると腎臓に負担がかかる。でも、適正なタンパク質なら、逆に腎臓への負担を軽くするし、一番効果があります」
糖尿病を患う人はカロリーの摂り過ぎが原因のため、制限カロリーは何としても守らなければ、となる。理想的なカロリー量は1600〜2000とされ、もちろんその人の労働や運動などの身体活動量も含め、健康だった時の体重×0.4単位で計算する。
「単位」とは食品交換表を使う決まりごとがあり、「80カロリー」を1単位として数える。たとえば、体重50キロの女性なら、50キロ×0.4単位=20単位に。1単位は80カロリーだから、20単位×80カロリー=1600カロリーが、その人の1日に必要なエネルギーとなる。参考文献として、日本糖尿学会編の『糖尿病食事療法のための食品交換表』(文光堂)がある。
「おかずは『まごたちわやさしい』を意識して食べてほしい。『まごたちわ〜』とは、『豆、ごま、卵、乳類(ちち)、わかめなどの海藻類、野菜、魚、しいたけ』の頭文字を9つ並べたもの。私は『まご食』と言っています。これは長寿食にもなりますよ」(前出・渡部さん)
カロリーの低い野菜や、肉も脂身の少ない鶏肉、魚もカレイやヒラメなど低カロリーの白身魚などを工夫して食べれば、カロリー制限内でも、満足感が得られる食事ができるという。
ただ、生活習慣を改善しても、ヘモグロビンA1cが国際標準値6.5以下にならない場合は、服薬が考えられる。最近は、新薬として注目されているインクレチン関連薬(インスリンの分泌を促し、血糖値を低下させる)が市販されている。体重増加、低血糖など従来の血糖降下薬の欠点が克服されたもので、専門医の間でも評価が高い。
しかし、長期的な効果や副作用はわかっていないとされている。
ともあれ糖尿病、あるいは疑いがあると診断されたら「必ず定期通院をすること」(前出・久富院長)をお勧めする。自覚症状のない糖尿病は、血糖値の数値で症状を判断する必要がある。定期通院で状態をチェックしたり、適切な治療をして貰うことが大切だ。